小谷野敦『東大駒場学派物語』

 はてなアンテナにあるブログ「武蔵野人文資源研究所日報」さんちよりの情報で、出版を知り、本日伊勢佐木町有隣堂にて購入し、一気に読む。非常に面白かった。著者自身、冒頭でゴシップだ、と言い切り、さらにゴシップこそが人間の言語能力を高めているノダ、と噴き上げて、こぶしがくるくると炸裂しまくる。ゴシップネタを軽蔑する人は多い。とりあえずそういうポーズをとると高級な人間にみえるし。でも、禁欲ぶっても、ポーズだけなら、貧困な言語能力は覆い隠すことはできない。そんな低劣で貧相な学問ごっこやお勉強をせせら笑うかのように、むしゃむしゃと健啖に数々のゴシップが語られていく。

東大駒場学派物語

東大駒場学派物語

内容紹介@ジュンク堂

 これが、ほんとうの東大入門!東大駒場は日本の大学の縮図。学者の人脈とその知られざる生態を浮き彫りにする本書は、受験生はもちろん、学生、院生、助手、講師、教授、ジャーナリスト、いえ一般人の必読文献です。
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0240323113

内容と目次@紀伊国屋

東大駒場は日本の大学の縮図。学者の人脈とその知られざる生態を浮き彫りにする。
第1幕 四天王の誕生(芳賀幸四郎芳賀徹平川祐弘と東京高師附属中学特別科学組 ほか)
間泰曲 英文科の落ちこぼれ、比較へ行く(入院と院浪;大学五年生の生活 ほか)
第2幕 シンデレラ・ガールたち(華やかな年、一九八七年;三島憲一ニーチェ』をめぐる小事件 ほか)
第3幕 神々の黄昏(修論と博論の関係はなかなか難しい;それほど芳賀と江藤の仲は悪いのかと思った ほか)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4403231136.html

これまでも、下記の森毅の本の他、加藤秀俊の『わが師わが友』、佐和隆光の『経済学への道』、森嶋通夫のいくつかの自伝、水田洋『ある魂の軌跡』など、自伝的なものはたくさん読んできた。一つの学派については、斎藤清明の『京大人文研』と竹田篤司『物語「京都学派」』などを読んだ。社会学では、『人脈社会学』。こういう類のものは、どんなジャンルのものよりも面白く読める。

ボクの京大物語 (福武文庫)

ボクの京大物語 (福武文庫)

 だから、ゴシッパーだとか、人脈社会学だとか、なんともにんともなリングネームをいただいてきた。でも、この本を読んで、むしゃむしゃやろうぜ、みたいなことが言えるようになった。有り難い。w ただ、困ったことには、私の好きなのは、人脈ではなくむしろネタなのである。真実よりネタというか。もっとわかりやすく言えば、私のあだ名は高校のころより「東スポ」なのである。「国立の梨本」というあだ名もあることはあったが、一貫しているのは「東スポ的」である。別に自称しなくても、場に馴染んでくると言われた。まあだから、むしゃむしゃといっても、言語能力といっても、たいしたことはないのであり、とほほである。
 しかし、この本は、モノホンである。そして、私が読み出してとまらなくなったのは、なんというか、「学問(の場)への愛」が横溢していたからだと思う。自分の大学の学問について、こんなふうに語れる人間は、どれだけいるんだろうか、と思った。物見高い、噂好き上等。それが基本だしぃ。でもさ、やっぱ学問ネタじゃないとね。だめなんじゃないかね。ゼミの人たちも噂すきだけど、オレがすき家の牛丼にオクラと山芋とありったけのねばねばのっけてまぜまぜして喰ったとかは、どーでもいいじゃんかよ。って、人のことは言えないとは思うけどね。