井上俊・伊藤公雄編『社会学ベーシックス』刊行開始

 世界思想社の創業60周年記念企画である新しい社会学講座である『社会学ベーシックス』(Basic Books In Sociology)がついに出るようです。今日チラシが届きました。講座というのは、日本独特の出版形式らしいのですが、編者がチームを作り、さまざまな工夫を凝らして学問体系を解説したものは、勉強をする上で非常に重要なものであると考えます。この講座は、ベーシックな文献を解説するとうかたちになっています。

出版社の紹介

 ここからすべてを始めよう!270冊のベーシックスを読みこなす!社会学を学ぶ人にとってベーシックな文献を、各10ページでガイド。文献の概要と学説史的背景、現代的意義を整理し、著者のエピソードや人脈に触れ、さらにポイントとなる引用文も加えて立体的に編成しました。執筆陣は、気鋭の若手から著名な研究者まで、第一線で活躍中の方々。社会学および隣接する諸学がこれまで蓄積してきた知の財産目録をコンパクトに鳥瞰し、読者を本の森へと誘います。初学者はもちろん専門家まで幅広く活用していただけるシリーズです。


第1巻 自己・他者・関係
第2巻 社会の構造と変動
第3巻 文化の社会学
第4巻 都市的世界
第5巻 近代家族とジェンダー
第6巻 メディア・情報・消費社会
第7巻 ポピュラー文化
第8巻 身体の社会学
第9巻 政治・権力・公共性
第10巻 日本の社会と文化
別 巻 社会学的思考
http://www.sekaishisosha.co.jp/cgi-bin/search.cgi?mode=guide&class=100

 私が社会学を勉強しはじめた頃のスタンダードは東大出版の社会学講座、いわゆる緑本で、構造機能主義とマルクス主義の二つの立場からの理論編が二巻、それに続いて、各論的なものがずらっとならんでいるというものでした。二つのはっきりした立場があったということもあるのでしょうが、社会の変動というイシューをめぐり端正な編集がなさレ手いたと思います。お金がない頃で、全部は買えませんでしたが、理論編二巻と知識社会学と社会意識論と経済社会学の五冊は暗記するくらい読み、今でもなにかあると読んでいます。
 教師になった頃によく読まれていたのが「基礎社会学」というシリーズで、社会的行為論、社会過程論、社会集団論、社会構造論、社会変動論という五巻の構成は、考え抜かれたものだと感心しましたし、講義をする上で常に意識もしました。ただやはり五巻本というのは、講座としてはややボリュームに欠けていたような気がします。
 その後出た講座としては、岩波と東大出版があるわけですが、このシリーズは編者から言っても前者に近い巻構成となっていると思います。ただし、採り上げられている文献を見ると、偏っているという批判にも応えるように工夫がなされていることがわかります。さすがに270冊の文献名をここにかきだすわけにはいきませんが、そのうちHPにアップされるのではないかと思います。日本の文献もいろいろ採り上げられているのも特徴だと思いました。