国立の料理屋で行われた院生時代の指導教員ゼミの新年会で、久しぶりに市川虎彦氏と会った。私が岡山に就職したあと、しゅーやざわのところに来て、うちのゼミにも出ていたのだが、学会のたびに飲み会で一緒になったりして、よく話すようになった。一本気の好漢で、今や地域社会学の学会でも役職をこなしているようだ。そして今回単著を出した。お礼が何ヶ月も遅れてしまった。ありがとうございます。
しかし、筆名の単著を出したのには笑った。私は、ずいぶん長く虎彦が本名だと思っていた。また虎彦というのが、高名な武士から採ったものか、それとも単なるタイガースファンなのか、と意見も分かれている。今回よい機会だったので、たずねたらタイガースファンだからだそうだ。
保守優位県の都市政治―愛媛県主要都市の市政と市長選 (松山大学研究叢書 第 71巻)
- 作者: 市川虎彦
- 出版社/メーカー: 晃洋書房
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
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東京から地方の大学に赴任すると、いろいろな思いが押し寄せてくる。赴任前の1月に東京で見た映画が岡山では4月になってようやく封切りになっていた。深夜のマイナーな番組もほとんどない。たとえあっても、一ヶ月遅れはざらだった。本屋は丸善や紀伊国屋はあったけど、洋書を手にとってみることはできない。音楽、アート系の映画、お笑い・・・なにもかにもが、絶望的だった。、
東京では、研究会や学会が頻繁に行われていて、学会に行くたびになんとなく疎外された気持ちになったりすることもしばしばだ。私はその焦燥を自分の中に封じ込め、精神神経疾患で壊れそうになりながらも、たまたま偶然で2人の先輩がとてもよくしてくださり、そのおかげで学内外にたくさんの友人を得ることができて、その支えでなんとかやってきた。しかし、地域に密着した仕事ができたのは、岡山を離れてからのことである。これに対して、市川氏は、地元にじっくり根を下ろした作品を仕上げられた。
「保守王国」というタイトルに、彼が向かい合ってきたものが見えてくるような気がした。オーソドックスな社会学をになってきた市川氏は、それを自治体ごとに調べ上げ、東京都は違う地方政治のの構図を描き出した。私のように、地方の可能性みたいなものを必要以上にデフォルメすることなく、分析を行っている。立派な業績であると思った。