M.チクセントミハイ他『モノの意味』

銀河

銀河

 チクセントミハイたちの訳書を、先輩の市川孝一さんと川浦康至さんが送ってくださった。ありがとうございました。この先輩たちは、事典にしてもなににしても、すごく高い本を惜しげもなくくださる。申し訳ない限りなのだが、先輩なのでありがたくもらっちゃうのであった。
 市川さんというと院生時代にソフトボールなんかをしていた思いでしかなく、川浦さんというと佐藤毅研究会の合宿で後輩のK氏やY氏たちに布団蒸しにされていたということを漏れ聞いている印象の方がつよいのだが、よく考えてみると市川さんは南博門下のアイビーリーグ留学組で社会心理史という領域を牽引している人だし、川浦さんはCMC研究の第一人者の一人だし、何となく社会心理学というと心理学系一色になっている現状において、心の支えとなっている先輩たちである。
 その先輩たちが、ずいぶん前に訳出を考えられ、塩漬けになっていたのが、やっと出ることになりました、というお手紙を添えて、本は送られてきた。市川さんというと、『狂気の烙印』の訳者というのが一番通りのいい説明かもしれないくらいで、古典的な本を二冊これで訳されたことになる。佐藤優的に言うと、こういう訳書を出してはじめて研究者は一流ということなので、すごいことだと思う。というか、そういう仕事がまったくこない俺は何だと、けっこうむかつかないこともない。ぼくはそんなに語学は苦手でもないんですよ。w

モノの意味―大切な物の心理学

モノの意味―大切な物の心理学

内容

 こころを抜きに人を語れないのと同じく、物を抜きには人間とその歴史を語ることはできない。仕事の道具・子どもからのプレゼント・幼い日の宝物。物は人の喜怒哀楽を帯び、人格と歴史を形作る。本書は、人間存在と物(object)の関わりを、広範なフィールドワークに基づき解説する、社会心理学の古典である。

目次

はじめに
第一部
 第1章 人間と物
 第2章 物は何のためにあるか
第二部
 第3章 家の中でもっとも大切にしている物
 第4章 物との関係と自己発達
 第5章 シンボル環境としての家庭
 第6章 幸福な家庭の特徴
第三部
 第7章 人と物との交流
 第8章 家族生活の記号
 第9章 意味と生存
付録
引用文献

 しかし、目次をみると、先輩たちが、遊んでないで勉強しろ、とにらんでいる気がしてくる。別に遊んでいる訳じゃないんだけど、じっくり勉強できない役回りになってきている。けっこう学生とは切磋琢磨しているという自負はあるんだが。
 考えてみると、ゼミで読んでみたい本のひとつであるよなぁ。学生に日本語読ませておいて、こっちは英語を読む。ホワイト、プラマーから、リンド、ミルズ・・・いくらでもできたはずだ。ただ一年目にマクルーハンを読んで、暗いゼミになっちゃって、トラウマになっている。学生もテキストテキストした本の方が好きだし。というか、古典的なテキストをしゃぶるように精読するようなゼミをする場合、どうやってシラバス書くのかね。目次でも書いておくことになるんだろうか。昔は、三年かかって通読とか、すごいのもあったんだけど。