上田勤・行方昭夫『英語の読み方、味わい方』

 ジュニア新書の行方本を読み終わり、まあ繰り返し読むにしても、発展学習のための本としてあげてある本の中で、唯一持ってなかった上田勤・行方昭夫『英語の読み方、味わい方』(新潮選書)を買って読み始めました。上田は行方の師で、ジュニア新書を読んでこれを読むと、どのような影響を受けたのかみたいなことまで伝わってくるようで、楽しいものがあります。たとえば、冒頭の描出話法の説明などは、同じ文を用いて説明しているくらいであるわけです。

英語の読み方、味わい方 (新潮選書)

英語の読み方、味わい方 (新潮選書)

概要

母国語でない英語は大体の意味がわかればよいので、作者の文体や文章は綾までは味わえぬものと、かつての私はあきらめていた。故上田勤教授の講義に出て、初めて英語も日本語と同じように微に入り細をうがって読み味わえるのだと知った。本書は同教授の名講義録『現代英文の解釈と鑑賞』を復刊させて第1部とし、ジェイムズの一つの短編を初めから終わりまで熟読玩味するための私による解説と訳を第2部とした。

目次

第1部 いろいろな文章(小説の冒頭
随筆の文章
評論の文章
Wittyな文章
English Humour
Aphorism「金言・警句」
感情と理性
短編の文章
伝記の文章
自伝の文章
簡明な文章
女流作家の文章
終刊の辞
創刊の辞
難解な文章)
第2部 『五十男の日記』ヘンリー・ジェイムズ

 ぶっきらぼうなくらい無駄のない簡潔な説明で、語の息づかいのようなものの味わい方を説明してある。『英文をいかに読むか』などともまた違う味わいで、もう少しちゃんと英語の授業を聞いておけばよかったと思ったりもした。漠然と「教養」ということばが思い浮かんだし、上田の活躍した年代から推察するに旧制高校の教員だったこともある人なのではないかと思ったし、また新制の大学でも教え、多くの学生を魅了した姿などを想像して、ワクワクした気持ちになった。アマゾンのレビューに次のような記述があったのが印象的だった。「入試や英検、TOEIC などの実用には即戦力にはなりそうもないが、英語の文献を読書を通して教養を深める対象として捉えている方などには、一度手にとってもらいたい本である」。「昭和の時代の大学では英語の授業はこんな風でした。英米の一流の作家が書いた文章を逃げずに読み進める」。いいなぁ〜と思う。しかし、こういうものに魅了されるたびに、飛び立てないことを情けなく思う。それにしても、「昭和の時代の大学」には、頭を抱えてしまった。