萬果荘へ

 今日は集中講義の中休みである。先方には悪いが、この方式が一番からだには楽だ。昨日はゆっくり世界水泳を見て、ぐっすり昼まで寝た。すっかり体力を回復した。洋服を洗濯したりしながら、囲碁将棋を見るという東京と同じ休日。今回は日程の余裕がないので、お土産類などは本日準備する必要がある。まず早速萬果荘で、マスカットを東京に送った。岡山では萬果荘を利用する。やはり果物ならここと、ある先生に教わったからだ。いろいろな店があり、新鮮でリーズナブルなものを送ろうとするときは農園から送る。農家の知り合いのある人から送られてくる場合は、この方式が多い。手軽に着実なものをその場でというときはキオスクも利用する。昔農園のおっちゃんに聞いたのだが、キオスクの品質チェックはシビアで確実だと言っていたからだ。実は、今年は萬果荘からはがきをもらっていた。毎年頼んでいたからと思うが、ちょっと自慢な気持ちになった。
 だから、ちょっとうきうきした気持ちでお店に行った。で、「マスカットお願いしたいんですけど」と言ったら、「ありません。今年は少なくて、みんな断っている」と店の人が言った。マスカットで今年はそれはないだろうと思った。ちょっとラフな格好で来すぎたかなぁと思ったりもしたが、はがきをもらっていたこともあり、聞き違いかと思った。で、「ずっとあとでもいいんですが」というと、はたして「清水白桃は今の時期しかなくて、今年はとれるのが少なくて」と店の人は言った。やはりと思い、「マスカットを欲しい」と言ったら、店の人はホッとした顔になり、「それならあります」ということで、地方発送の手続きをはじめた。「今年は白桃があまりとれずにみんな帰ってもらっている」「よく注文していただいているから」「毎年今頃来るのですか」などと、いつもは重厚に店に君臨している店主と思しき人が、フォローのようなことまで言い出して、ちょっとびっくりした。ここに岡山の人の篤実と、責任感と、シャイネスと、人の良さを感じられるようになると、「二度泣き」と言われる土地柄にも、だいぶなじんでくるようになると思う。それらを押し殺して、サービススマイルが一切ないミニマムの対応で殻にこもっている重厚さは、サービス満点な土地柄の人にはなんともにんともだろう。大学の近くの文具店で「○○はありませんか?」と言ったとき「ねぇ!」と突っぱねるように言った店主や、高梁市の化粧品店で「○○はありませんか?」と言ったとき「それは製造中止されました」と言った店主の姿を見てきた。こうした対応はちょっとどうかと思う面もあるが、今回の対応は十分リーズナブルだし、むしろ懐かしい気持ちになった。もっと深い玄妙なニュアンスもあるのだと思うけど。
 実はマスカットばかり送っているのは、やはり清水白桃などは、鬼高いと言うこともある。これは昨年も書いた。上は限りなくある。桐の箱の似合うフルーツとしては、山形のさくらんぼと双璧だろう。しかし「おやつ」について書いたサイトを調べているときに、この店の缶詰の話が出ていたことを思い出した。生の桃より・・・は、まあそんなことはありませんですよね。戦慄が走るくらい白桃は高いわけで、ここ缶詰は一種の企業努力だろう。しかし、実は私は一度も食べたことがない。

■岡山「萬果荘」の清水白桃缶詰
ただの「桃缶」じゃないんです。甘くてやわらかくて、口の中でトローリとろけるようななめらかな食感。桃缶の概念を覆す極上品。ただしお値段メチャメチャ高いです。一缶1500円くらいはすると思う。生の桃より高かったりして〜
http://www001.upp.so-net.ne.jp/kottsu/oyatsu.html