忙しくていかんともしがたい状況である。卒論はすべて週末前にケリはついているので、そういうことではないが、書類作りとかそういうことがたまりまくっている。本をいただいてもなかなかお礼もかけない。とりわけ困ったのが『文化社会学入門』で、心当たりの執筆者に、くれたの?と問い合わせたが、誰も違うみたい。藤村君に至っては、まだ献本依頼もしていないと、学会でお会いしたときに言われた。まさか編者が・・・と思い、びびった私は、前会長とすれ違いそうになったとき、シュタッと隠れたのでした。でも、見つかったっぽい。こうなったら、出版社にお礼状書くしかないかな。
その文化社会学入門であるが、「テーマとツール」という副題があるように、本格的なテキストを目指したものである。構成は非常に明解で、変容、諸相、道具箱ということになっている。まず、「・・・化」という変容を捉え、その上で諸相を概観し、そして道具箱を学ぶというかたちになっている。
- 作者: 井上俊,長谷正人
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2010/10/01
- メディア: 単行本
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諸相のところは、この本の特徴の1つで、非常に多くの紙数を割いている。こんどの『社会学事典』もそうなのだが、この辺に厚み(ギアツ)をもたせて、事実観察をさせ、他方で、本をじっくり読ませるという工夫には、編者、著者たちが創り上げてきた文化の社会学のありようが明確に示されている。
いわゆる緑本で社会学を勉強した世代には、若干つかみ所がない感じがするわけだが、論述をいろいろ見てゆくとコクもあるし、味わい深いものがある。つかみ所のなさ、くいたらなさに、一定の満足を与えようというのが、道具箱のところで、がっつり学史をふり返ったあとに、近接領域の勉強をして、そして諸相とともにこの本のもう一つのキモとおぼしき補助線を示すかたちになっている。これも奇をてらうことはなく、自然、身体、ジェンダー、階級、権力、テクノロジーというオーソドックスなパラメーターで、亀裂が暗示されるかたちになっている。
『フラットカルチャー』のほうは、せりか書房からの献本になっているが、加島卓さんがくださったことは、はっきりしている。加島さんに『文化社会学入門』くれましたか?と言ったら、あげてませんが、こっちをあげます、ということでいただいた。本当に申し訳なかった。ありがとうございました。
- 作者: 遠藤知巳
- 出版社/メーカー: せりか書房
- 発売日: 2010/10
- メディア: 単行本
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書いてあるのは、ゆるさやぬるさとして感じられるような、フラットな文化である。そして、間抜けずらでサブやメインなどという議論については、禿げしく批判がなされている。目指されているのは、ゆるさやぬるさと対峙する「批評的な距離を社会学の言葉で定着する」(p.47)である。伝説の知性・由良君美にも学び、おそらくは批評理論全般にも精通しているだろう編者のこの言葉はたいへんな衝撃であった。
実は、私は、サブカルチャー論を標榜し、そこに亀裂や作品性を読み込もうとしている。専門のミルズをケネス・バークの視点から、批評論として読みかえようとする学会報告もした。そして、私は、たいした学もあるわけじゃないのに、シーンやシャンやトレンドや、その他いろいろな概念を珍妙な手つきで動員して、「これ(・∀・)イイ!!」みたいな、無責任な称揚をしたりする。で、『ストリートワイズ』のあとがきに引用されている、フィッシャーの書評を読んで、萎え萎えになったりしている。
「やられちまった感」などと言うのはおこがましいだろう。私はミルズしか知らないし間抜けな調査しかしていないとも言える。しかし、逆に考えれば、この本を読むことで、ミルズ読みや、調査を改善して、コツコツやっていけばいいのだろうとも思った。
私は文化社会学なんてものは人に教えようもないと思っていて、授業でもあまりやりたくない気持ちすら抱きはじめていた。しかし、それは自分の怠慢によるものだと、深く反省した。
よい本二冊をいただいた。ありがとうございました。加島卓さんはどちらでも健筆をふるわれている。独特の芸風がこうした論考にも感じられる。最近編著も出され、これもいただいた。すみませそ。アゲアゲムードで爆走中であるが、重厚な一冊を出されるのか、それとも新書でサックリ切れ味をみせるのか、それともそうしたものには背を向けるのか、大注目である。
- 作者: 南後由和,加島卓
- 出版社/メーカー: 東京書籍
- 発売日: 2010/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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