『コスプレする社会−サブカルチャーの身体文化−』

 大学にせりか書房から本が届いていた。プレジデントからセリカへ。う〜ん、びょーてぃふぉだよな。昔、ウンコ色のセリカに乗っていて、ウンセリというあだ名の友人がいたのを思い出す。それはともかく、申し訳なく、またありがたく、本当にすみません。まだめくった程度ですが、放置すると書けなくなりそうでして、また、卒論に引っ張りだこになりそうな本なので、持って行かれたら最後、という感じもしますので、今のうちに書いておきたいと思います。
 編者による数行の紹介は、私にとって、非常に刺激的です。スタイルの概念にはこだわり続けてきたからです。サブカルチャーとスタイルというとヘブディッジがあまりに有名なわけですが、60年代の対抗文化において、世代的な響きを持ったことばであり、クールとか、インとかゆうことばたち(笑)と一緒に用いられたりしたことがあることは、忘れてはいかんはずです。背景には公民権運動、ベトナム反戦運動があり、そして、黒人文化や若者文化があったわけですね。運動の批判的契機はミルズ的な議論だったわけですが、能動的契機はミードやブルーマーの議論があり、“attitude”にまで遡及した身体性の文化が探求されたということから、「文化なんかでありえないもの」が文化として認知されてゆく過程を見ることで、現代のサブカルチャー(田舎、障害、加齢、さらには「ダメ」な若者など)をみつめてゆくことができる、という漠然とした思いがありました。
 他方、カルスタ的なものからは、距離をとっていました。議論自体は面白かったのですが、こちらの理解力の問題などもあり、シュタッとツボに入るような理解にまで至らなかったからです。しかし、本書は、編者が示すように、ピシッと一本スジが通っていて、また目次にならんでいる主題がジツにセンスよくならんでいるように思われました。

コスプレする社会―サブカルチャーの身体文化

コスプレする社会―サブカルチャーの身体文化

編者による紹介

 日本のサブカルチャーをスタイルという観点から考える。コスプレ、タトゥー、女装、制服などのテーマからコスチュームとアイデンティティの関係を再考し、現代社会を逆照射する。身体文化からとらえた日本社会論。
http://www.kyoto-art.ac.jp/graduate/about/pdf/09teacher_34.pdf

執筆者による紹介

 私が「変容する女装文化 −異性装と自己表現−」という小論を寄稿した論集『コスプレする社会−サブカルチャーの身体文化−』(成実弘至編)が刊行されました。身体・服飾とサブカルチャーの関係を多角的に探った9つの論考は、十分に読みごたえがあると思います。また、私の論考は、異性装としての「女装」と、異装としての「着物」との類似性にも触れています。ご購読いただけたら、幸いです。


【概 要】
コスプレ、タトゥー、異性装、制服・・・
サブカルチャーのスタイルから社会を読み解く。


キャラクターに扮する、身体に傷をつける、女装する、制服を改造する。
彼らは装うことによって何を求めているのか。〈コスプレ〉をキーワードに若者文化の現場に赴き、その独自の価値観と行動様式の実態に迫る。


【目 次】
序   仮装するアイデンティティ成実弘至
第1章 コスプレという文化 −消費でもあり生産でもあり−(田中東子)
第2章 ヴィジュアル系コスプレ −模倣とコピーの身体技法−(小泉恭子+鈴木裕子
第3章 変容する女装文化 −異性装と自己表現−(三橋順子
第4章 ドラァグクイーンというあり方 −シモーヌ深雪に聞く−(百々 徹)
第5章 秘める刺青、見せるタトゥー −日本と台湾から−(山本芳美
第6章 文身とタトゥー −交叉する身体−(田川とも子)
第7章 朝鮮学校の制服文化 −表現への希求、交渉への必然−(韓 東賢)
第8章 不良スタイル興亡史 −ツッパリはなぜ消えた−(難波功士
第9章 ストリートスタイルを読む −サブカルチャー再考−(成実弘至
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/200906260001/

何年か前に、ピアス、タトゥー、身体改造で卒論を書いたのがいて、調査をしたり、またいろいろな事例を紹介したりと、なかなかの力作で、しかし、指導する側=私の力量に問題があり、上手く指導しきれなかった感が残ったのです。今回本書をめくっていて、こうすればよかった、ああすればよかったと思うことが多々あり、執筆陣の力量に敬服しました。また、すべての章が響きあって躍動するような工夫で、序論と最終章を書いている編者の力量には、脱帽でございます。
 とりわけ6〜8章の題材設定は、おお!!と思いました。あと、4章ですね。シモーヌ深雪の唄は、黒百合姉妹のコンサートで聴いた。「アムステルダム」とか、すごいツボだったし。
 今ちょっと忙しいので、この程度にしますが、熟読しようと思います。これはウソではありません。なぜかというと、ストリート文化についての書評を一つ頼まれたのです。