崎山治男『「心の時代」と自己』(勁草書房)

 校正が終わったあと、有隣堂の本店で立ち読みなどをした。そして、いくつか本を買った。崎山治男『「心の時代」と自己』(勁草書房)は、感情社会学の現況を知り、その応用のかたちを学ぶために買った。おりしも摂食障害を研究した修士論文の審査に入っている。そのレビューはミードの諸解釈と摂食障害の諸研究を真っ向からつきあわせるかたちになっている。相互行為論系の論文によくあるような、諸氏百家的な二次文献をレビューする部分は思い切ってカットさせた。それは指導をした私の勉強不足でもあり、こういう最新の成果を勉強して修士課程の総括をするように言おうかと思い、そのためにはまず自分が勉強しなくてはと思い、買った。最近丁寧なレビューをした面白い文献が減ったのにこれはめちゃめちゃ読む気になる面白い本だ。でも「減った」というのは、そのまま「面白く感じる感受性の摩滅」「読む文献の減少」の証明かとも思い、やる気になった。「心の時代」の議論から、「心の労働」の議論にすすんでいることも、アカデミックな体裁でありながら、非常に現代の問題を射抜いている書物として貴重であると思った。