三浦展の3冊

 昨年秋に三浦展氏から、下流社会の第3章と下町散歩と3.11と3冊の本を矢継ぎ早にいただいた。ずっとお礼が遅れていた。ほんとうにすみません。お礼状自体は書くことがすぐできたのだけれども、書かれている内容が授業や自分自身の原稿とリンクしてくるところが多く、なかなか冷ますのに時間がかかったというのが理由である。

スカイツリー 東京下町散歩 (朝日新書)

スカイツリー 東京下町散歩 (朝日新書)

下流社会 第3章 (光文社新書)

下流社会 第3章 (光文社新書)

下流社会3章のアマゾン紹介
ここ数年で、女性の趣味が大きく変化している。おしゃれなイタリアンよりも居酒屋に誘われたい、休日は映画鑑賞よりもお寺めぐり、父親の趣味の遺伝など、彼女たちの変化は消費行動にあきらかに表れている。彼女たちは、言わば「オヤジ系」。本書では、独自調査やライフスタイル別のインタビューをもとに、現代女子を取り巻く新たなニーズを探っていく。男子諸君、企業の商品開発者、職場の上司たちは、どう変われば女子心をつかめるのか!?OL系でもキャリア志向でもない、あなたのまわりに必ずいる「第3の女」の実態に迫る


3・11後の建築と社会デザイン (平凡社新書)

3・11後の建築と社会デザイン (平凡社新書)

3.11のアマゾン紹介
3・11は、日本が抱えていた問題を顕在化させ、私たちは、いきなり歴史の転換点に投げ出されてしまった。東北の再生、そして新たな日本の再編に向けて、これまでの何を改め、どこへ向かうべきなのか。建築、社会学、社会経済学の気鋭の論客が一堂に会し、日本の未来のため、熱い議論を繰り広げた―。経済と効率の偏重から脱して、いかに共感と共有の社会をつくるか。

 三浦氏が、働かないと自分がみつからねぇと啖呵を切り、仕事を持って家族を持って子供を持てよ、と諭し、働かない人々やファスト消費を批判し、高円寺や下町を散歩し、事例だけではなく簡便な数値データを集め、産業界に語り続け、堤温帯と対談し、アクロスな著者としての責任を果たし続け、他方で、ウェーバーを訳し、見田宗介と対談し、・・・という一連の著作活動をされていることについて、揺るぎない一貫性を見ているのは、私だけではないだろう。
 知や倫理や芸術が瓦解してしまった現代社会において、三浦展氏は、再生の論理を一貫して探求し続けてきた、と私は思う。そして、消費の倫理を産業界に対して、マーケティングのプロとして語り続けているところに、氏の真骨頂はあるのだと思う。ウェーバーマルクス、ベルとパーソンズなどについて、繰り返し繰り返し議論したことなどを思い出しながら、今回も本をめくった。
 3.11の本には、三浦氏の他に、中村陽一氏、藤村正之氏の名前も見える。高田の出身の三浦氏、中村氏は金沢出身のNPO研究者、実践者、藤村氏は盛岡出身の<生>の社会学者である。今回の著作は、1つのきっかけとしての講演企画をまとめたものであるわけだが、じっくりとした研究の展開に期待したいと思っている。
 私自身はなにができるのだろうか。東京新聞の久間木聡さんが、年賀状で、3.11以降ミルズが再読されているようですよ、と教えてくださった。加藤典洋ニューヨークタイムズに書いた記事などとの関連などを思い出したが、最近共著者からいただいたハーヴェイの著作などとも関連することなんだろう。ダイレクトにそういうことを論じるつもりはないが、頭の片隅において考え続けたいと思う。