- アーティスト: シザー・シスターズ
- 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
- 発売日: 2010/06/30
- メディア: CD
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私は女子大では国際社会学科というところに所属していて、その学科はグローバル化や共生を鍵語としている学科で、しかも私は文化の社会学を専門領域の一つとしているわけで、多文化共生という問題については、積極的に勉強しなくてはいけないものだろうと思う。で、カルチュラルスタディーズみたいなものもかじってみたし、また文化相対主義、多文化主義、複数文化論、文化の個別性といった議論なども勉強してみた。しかし、ジャルゴンやロジックが乱舞する切れ味鋭い議論を前に爆(´・ω・`)ショボーンとたじろぐこともしばしばだったし、キョーセーとかゆうと脳がキョセーされちまったような状態になってしまい、ガツンと来ずじまいであった。そのくせ、ハイブリッドな文化、などと『サブカルチャーの社会学』に書き、クレオール論で宮台真司を引用した意図は理解されたものの、ハイブリッドな文化の内実、規範構造を論じていなければなにも論じていないのといっしょではないか、などと試験答案に書かれて、爆(´・ω・`)ショボーンとしていたのであった。
で、この本を手にとって、まずぶっ飛んだのは、表題の按配である。字面的には愚型っぽくはあるが、非常に的確で、鋭く問題をえぐり出している。そして、序章には、「多文化共生のうさんくささ」などと書いてあり、ツボをつかれまくりってかんじである。
▼紹介
- 作者: 岩渕 功一
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2010/06/23
- メディア: 単行本
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多文化共生政策の一方で、文化差異の承認や多文化社会としての国家構想の議論は等閑視されている。地域やコミュニティ現場での他者との邂逅や共生の実践、メディアの表象などを検証して、管理・統治に抗するいま/ここでの文化の多様性の内実を照らす。
▼目次
序章 多文化社会・日本における〈文化〉の問い 岩渕功一
1 多文化主義の退場と多文化共生の台頭
2 多文化共生のうさんくささ
3 多文化主義なき多文化共生
4 本書の構成――多文化な問いをめぐって
第1章 「多文化共生」をめぐる議論で、「文化」をどのように語るのか? 原 知章
1 多文化共生推進プランの意義と問題点
2 本質主義的文化観への批判
3 反本質主義的文化観の両義性
4 新宿区・大久保地区における共住懇の事例
第2章 「連帯としての多文化共生」は可能か? 塩原良和
1 福祉多文化主義と新自由主義的「改革」
2 「多文化共生」の制度化への批判の意図せざる帰結
3 本質主義批判の意図せざる帰結
4 対等な関係性づくりのプロセスとしての「多文化共生」
5 多文化共生に向けた「協働」
6 「協働」から「連帯」へ?
第3章 「地域イメージ」、コミュニティ、外国人 五十嵐泰正
1 場所をめぐるアイデンティティの闘争
2 多文化的な現実と「下町」の抵触
3 二重の規範として機能する「コミュニティ」
4 「いいかげんさ」を鍛え直す
第4章 岡山在日物語――地方都市で生活する在日三世の恋愛・結婚をめぐる経験から 川端浩平
1 個人化を推進する二つの力学と回帰するエスニシティ
2 地方における多文化共生の問題点
3 在日三世の恋愛と結婚をめぐる物語
4 地方の多文化共生をめぐる理論と実践の方向性
第5章「国民」と社会の再編をめぐる相克――「電子移民」の台頭と「中流」階級の憂鬱 清水知子
1 「中流」幻想の破綻と「日本的経営」の行方
2 グローバル・シティの形成と「電子移民」の台頭
3 OLのサバイバル術を問う――ドラマ『ハケンの品格』から『OLにっぽん』へ
4 多文化主義はネイションの想像力を超えられるか
第6章 ジャーナリズムに見る文化作用――二〇〇六年改正入管法報道の検証 林 香里
1 ジャーナリズムの盲点――言説の「文化」依存性
2 ジャーナリズムに作用する二つの「文化」
3 入管法改正とその背景
4 分析の方法
5 三つの報道フレームとその関係
6 考察と展望
第7章 FMわぃわぃのメディア実践――ディアスポラ、メディア、公共空間 伊藤 守
1 小さな放送局のはじまり
2 長田区のなかのコミュニティFM局
3 定住外国人のメディア実践とアイデンティティ
4 多文化「共生」とは
▼著者プロフィール
岩渕 功一(イワブチ コウイチ)●編著…早稲田大学国際教養学術院教授。専攻はメディア文化研究。著書に『文化の対話力』(日本経済新聞出版社)、『トランスナショナル・ジャパン』(岩波書店)、編著に『越える文化、交錯する境界』(山川出版社)など。
http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-3316-5.html
それでも、ディアスポラなんて言葉をみつけて、ふふふふふ、などとほくそ笑んだのだが、これもあえて使ったという作意がすぐに見て取られる結果となる。どれも、丁寧に現実と向かい合い、ことばを慎重に用いて、読みほどいてゆく論考であるように思われた。まだめくっただけであるが、「文化の社会学」というと、あの類ね、などと言うような人にも、キッチリ読める本だと思う。今年のゼミ生は若者論志向が高いので、使えないかもしれないが、是非ともゼミや調査実習のテキストとしても用いてみたいと考えている。