三浦展『ニッポン若者論』

脳みそショートケーキ

脳みそショートケーキ

 三浦展氏から本をいただきました。毎度毎度ほんとうにありがとうございます。恐縮しております。大幅加筆、ということで、期待しながらページをめくった。
 まず目につくのが、見田宗介との対談である。献本したら、めっさ面白い、というリプライを得て、対談しようよ、とゆったら、オッケーということで、中央公論でやったらしい。これはめちゃめちゃうらやましい。「僕ら」は見田宗介に萌えた世代で、公刊された著作はほぼ全部読んだ、と言ってもいいだろう。三浦氏と、国立の喫茶店などで「『価値意識の理論』は修士論文だもんなぁ・・・」「そうだよなぁ・・・」という会話を何度くり返したことだろう。
 それはともかく、対談はウェーバーなどをモチーフとしつつ、本格的な内容を論じている。「地に足をつけること」「根をもつこと」などと関わる議論がなされていることは、若者論やサブカルチャー論との関わりでヴァナキュラーということばにこだわり続けている私としては非常に刺激的であった。
 第二に、解説を浅野智彦が書いていることである。ほんとうは、「さん」「氏」などと呼ぶべきところだろうが、「氏」をつけつつ「ミウラテン」と黙読しているわけだから、ここは敬称略というのが、釣り合いだろう。名前も音読みできるものなら、したいというか。浅野智彦は、青少年研究会において、リーダーシップを発揮し、昨年の日本社会学会でも、地方文化や新しい若者像としてのヤンキーなどとの関わりで若者文化の議論をするプロジェクトにも影響を与える議論を行うなど、活躍されている。とかく印象批評にとどまりがちな領域において、理論的にも実証的にも堅実な研究を行い、後進を育てている、貢献度の高い社会学者であることは言うまでもない。
 それはともかく、浅野の解説は、基本的にはそうした社会学的な若者論との関わりにおいて、三浦氏の著作にコメントするものになっている。地元論やソーシャルキャピタルなどといった議論と三浦氏の議論を接続するかたちになっている。

 地元が好きで、よさこいを踊り、スピリチュアルを信じる「ジェネレーションZ」世代。
バブルのさなかに生まれ、小学校入学時にはバブルが崩壊、その後の「失われた10年」とともに青春期を過ごした彼らの生態は、これまでの「戦後」の常識では捉えることができない。
 人気職業ベストテンにキャバクラ嬢がランクインしたことでマスコミを騒がせた話題の書『日本溶解論』を全面改訂。大幅に加筆し、ついに文庫化。


はじめに ジェネレーションZとは
第1章 地元志向―格差固定社会における自己肯定感の根拠
第2章 キャバクラ嬢になりたい女子―雇用危機が生む新たな職業選択
なりたい職業別インタビュー
第3章 スピリチュアルにはまる若者―「近代」の「解凍」の時代における「凝固」
第4章 よさこいを踊る若者―地域社会の解体から生まれた「J」志向
若者インタビュー
対談 「進歩」が終わった世界を若者はどう生きるのか(見田宗介×三浦展
結 あとがきにかえて
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4480426957.html

 細かい議論ではいろいろな問題点が指摘されていることは私も知っている。たとえば、昨年の日本社会学会のシンポジウムにおいては、よさこいソーランの踊り手でもある内田忠賢がファクトファインディングスに対し、批判的なコメントをされていた。その辺も含めつつ、議論が立ち上がってくれれば、多少自分もいいたいことが出てこないこともないかなぁ、みたいに思ったが、気のせいかも知れない。w
 いずれにしても、非常に刺激的な文庫化であった。