田中浩編『ナショナリズムとデモクラシー 』

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 関東社会学会の例会で秩序問題をめぐり、ホッブス、ルソー、アレントなどが話題になった。そのとき、田中浩先生とその門下の柴田寿子さん、小澤亘さんたちが、ホッブス、ルソー、スピノザ、シュミットなどを論じた著作を思い出しながら、ボケーッとしていた。社会科学の醍醐味は、一種悪魔的なものと向かいあうことにあるのだと思う。おりおりの思想的な流行は、精密、破壊、人間、構造、身近など、けっこう切実な問題と切り結びつつ、社会科学に影響を与えている。そして、社会学の流行の議論は、しかたなくフォローするしかないものの、なんかなぁと思うところも少なくなかったのが、ここのところ公共性、自由なども視野に入ってきて、独特のクセは抜けるはずもないが、知的興奮をそそられることも少なくなく、柄にもなく言語哲学やシステム論の本を引っぱりだしてめくってみた。一日だけだけどね。w
 そんな熱気もさめやらぬ時に、田中浩先生から本を送っていただいた。80を超えて正規雇用に着かれたと思ったら、さらに生産がはじまって、もう誰も止められない、というカンジで、バイタリティには頭が下がる。

内容

 現代史におけるきわめて重要かつ喫緊のテーマを、各分野の第一人者が論じるシリーズ「現代世界」。民族、文化、宗教、国家をめぐる相克の歴史のなかで、いかにしてデモクラシーは成り立ち、そしていま、いかなる困難に直面しているのか。「未来」誌上にて好評を博した第2回リレー連載を再構成のうえ単行本化。

目次

ナショナリズムとデモクラシーの「融合」と「乖離」――その歴史的・思想史的考察(田中 浩)
デモクラシーにとっての「市民」・再考――「ナショナル」なものとの論理連関(樋口陽一
繋ぐものと距てるもの――ナショナリズムとデモクラシーの環(山室信一
ナショナルな価値と普遍的価値(村松惠二)
多元的な国家の課題――カナダ政治の歴史と展望(加藤普章)
タンデムクラシー試論――ロシア政治における制度化と「デモクラシー」(下斗米伸夫)
中国――ナショナリズムとデモクラシーのゆくえ(野村浩一)
中欧における民主化ナショナリズム――チェコスロヴァキアの事例から(林 忠行)
〈愛国愛教促団結〉について――ムスリムと国家(板垣雄三
イスラーム世界の眺望(小杉 泰)
「共生」政治の時代へ――アフリカのサブナショナリズム(川端正久)
「ポスト・ナショナル」デモクラシー(坂本義和
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624301125

 先生の著作は、近代思想史研究から勉強を始めた私には、親しみのあるものが多い。ナマイキを承知で言えば、アカデミックな意味もさることながら、なんとなく肌合いがあうところがある。なんというか、論のハコビだとか、オトしどころだとか、そういうものを全く信じちゃいないというか、そういって悪ければ、信じちゃいけない、というのもアリというか、そういう部分があって、悪魔的な部分や形而下のことなど、泥水も併せのんで、でも、そうは言っても、なんかみんながやるなら、民主主義も大事なんじゃないか、みたいなこと。思いつめた実証ごっこ、論証ごっこ、頭よしおクンごっこなんかで、思わず口元をゆるめてしまうような馬鹿面とは無縁の構えをされると、たいていのこけおどしは縮み上がってしまう。国家法制度支援で、世界各地のことを考えるさまざまな知人のことを想った。