難波功士『広告のクロノロジー』

FAME MONSTER (8-TRACK)

FAME MONSTER (8-TRACK)

 難波さんから新著をかなり前にいただいた。ずっと放置したままで、申し訳ない限りだったが、ともかくお礼を申し上げます。ゾッキー、ヤンキーと、光源を示され、学会シンポにおいても、重要な問題提起をされたことは、関連領域の研究をするものとしては、しっかりと受け止めて、研究に生かしていきたいと思ってきた。そうしたご研究においても、難波スタイルというのは、カッチリ打ち出してあったわけであるが、新著はご本業ど真ん中というべきご著作で、日本史学の基礎と、広告業界のセンスを下地にした、軽妙さと重厚さを兼備した貴重なご研究になっているように思われた。めくったくらいで言うのも何だが、間違ってはいないだろう。
 二部立ての構成力は、非常にくっきりと論理を浮き立たせており、うまく書くもんだなぁ、と感嘆する。画期があって、困難があって、でもってコピーライターの時代が省察され、でもって、前半をみると、画期がシュタッと輝いて見える。その辺の、シュタッをコピー化したら・・・とも思ったが、当然そんなものは新書かなんかで計画中じゃないかと拝察した次第。増田聡さん的に言えば、広告未来型とか、広告未来派野郎みたいになるんだろうけど。未来への胎動、にどういうふうにして股ぐら一本筋通すのか、みてみたい気がしている。

広告のクロノロジー―マスメディアの世紀を超えて―

広告のクロノロジー―マスメディアの世紀を超えて―

 デジタル化、ネットワーク化、モバイル化 ― メディア環境が激変するなか、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌のマス4媒体上の広告は朽ちつつあるのか。過去と現在を同時に見据え、未来への胎動を探る、世紀を超えた年代記


目次
●第一部 広告史の諸相
1 広告の生まれるところ
2 ポスターの社会空間
3 戦前の関西広告史をめぐって
4 昭和前期の『広告界』
5 広告賞の政治学
6 プロパガンディストの読書空間
●第二部 広告の現在に向けて
7 画期としての一九五一年
8 広告クリエイティヴにおける二つのビッグバン
9 広告/身体/アイデンティティ
10 広告を文化として語る社会 ― 日本の一九七〇〜八〇年代を題材として
11 日本のテレビCMの困難をめぐって
12 アジア消費社会と広告
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 広告の卒論を書きたい、というのは毎年かなりいる。話を聞いていると、どう考えてもマーケティング系の問題関心だし、そんなことなら何で商学部にいかなかったんだ、と言いたくもなるんだが、今回いただいて、まだめくってみただけだが、そんなことを言ってはいけないんだろうと、若干反省した。
いつも本をいただくばかりですみません。私も、いずれ近いうちに出したいと思ってますです。