清香楼@野毛

Friend Opportunity

Friend Opportunity

 野毛界隈と言えば、闇市の町なわけだし、東京で言えば上野御徒町といった風情で、庶民的な安い居酒屋が多いっていうイメージもございますわけですが、最近増えているのは、ちょっとこぎれいなバーやダイニングのたぐいで、画廊の町である吉田町の延長線で、おもしろいお店が増えている。敷居の高い町じゃないし、居抜きなんかもそこそこあるから、若いセンスのいい人たちが開店して、成功することも少なくはない。立ち飲みもあるし、野外のみなんかもあって、なんと野毛の角の居酒屋にはズージャーミユージシャン呼んじゃいマスタ、みたいなことになっていて、なかなかなかなかでございます。
 それはいいんだが、とんねるずの番組でやってから、三幸苑がすんげぇことになっていて、野毛では珍しい行列ができていて、とっても食べにいける状態じゃない。野毛は、岡山の華光軒みたいに、メディア隠し撮りで雑誌に出ると、へそ曲げて、一ヶ月くらいやすんじゃったり、定休日いい加減に設定して、いけずしまくりな、ってこともないけど、そこそこいけずな店もあり、取材にきても、まずいメニューしか食わせないとか、そんなところもあった。あまりに有名な看板のないどう見ても民家な飲み屋は、酒一本しか飲めないとか。あれまだあるのかね。地元も人間もあまり知らないお店うま。まあでも、三幸みたいな、汚い美味い店とか、いくつかのコンセプトで、野毛地区が栄えるのは、それはそれでよいことだと思う。
 もう一つ野毛で増えているのは、中華のお店で、バブル前からちらほら増えていて、最近も増え続けている。なんか、そこそこ大衆的な中華街になっちゃっているかもしれない、という感じもする。なんとなく、八角の香りなどが強く、コアな中華風味で、くせが強いかなぁ、と思わんこともない店が多い。そのなかで、うちの近所で、最近このあたりで一番美味いと言われているのが、清香楼である。
 地元民だけではなく、いろんな人たちが入っている。一度行ってみて、ランチを食ったら、おまけに杏仁豆腐がデザートに出てきた。こういうことのできる店は、うちの近くでは繁盛している。たとえば、萬福という出前軍団でブイブイいわしていた店が発展したのは、どこにでも出前するという機動力とともに、昼時に店に行くと、スープじゃなくて味噌汁が出てきて、ご飯は郷里のいい米で、でもって漬け物がどーんとどんぶりで出てきたりとか、そんなことで、客がすごい勢いできていた。清香楼もそんな感じなのかなぁ、と思っていたら、うちの親とかも美味いという。
 で、最近もう一度いってみた。たしかに美味い。というか、あてくしの口にはあった。豚肉の細切りの炒め物は、楽園だとか、全盛期の安楽園なんかの、鬼のような炒め技だとは思わないけど、目指している方向性がくっきりとわかる技のさえがみられる、ってかんじでしょうか。小理屈はともかく、美味かったっす。それともう一品、海鮮ビーフン。具よし、盛りよし、味よし。でもって、卵とかが炒りつけてあって、何となく味にコクがあるのね。ビーフンも、昔の給食に出ていたゆですぎのそうめんみたいなやつじゃなく、絹糸のように細くキュキュットした感じで。一人だったら、ビーフン一つ食いきれないかも。そういう庶民的なものから、内臓系とかマニアックなモノまでそろっていて、なぜかショーウィンドーにはコイの丸揚げまでかざってあります。
 野毛では新参者の店だし、まだ野毛の味じゃないね、と言いたいところだが、ここももう20年やってるんだね。まさに光陰矢のごとしと思った。三幸苑が行列すごすぎて、並ぶ気がしなかったら、向いの大来、餃子の万里もいいけど、野毛本通りのこのお店もおすすめです。