常松淳『責任と社会』

色々

色々

 常松淳さんから、献本のお知らせが来た。若い人から同様のお知らせいただいた場合は、常に献本を辞退し、購入することにしているのでそうした。どのくらい負担がかかるか、私はよく知っている。資源は有効に使ったほうが良いと思うし、もらうより買ったほうが、本屋さんのためにもなるだろう。そんなわけで、必ず買うことにしているのである。
 で、常松さんがなぜお知らせくださったかというと、うちの大学の講義を担当いただいていて、一度呑んだことがあるからだ。お気遣いに恐縮するしかなかった。うちの大学は、企画ものの講義などは若手、中堅問わず、注目株にお願いしている。多くは顔の広い替え歌戯作者の仲介によるところが多いが、私が突然押し掛けてお願いしたようなこともある。常松さんは、前者である。注文すると、ほどなくアマゾンから届いた。略歴に、うちの大学の名前を出していただいて恐縮した。大型書店で見かけたら、平積みにしておいてあげようか、などと思ったりした。

責任と社会―不法行為責任の意味をめぐる争い

責任と社会―不法行為責任の意味をめぐる争い

内容説明

法的責任は、限定的なものなればこそ、当事者の意に反してさえ強制できる。しかし、日常的な場面での果たされない責任を追及する手段として、法的制度が利用されるときには、人々の抱く責任観念と法特有の枠組み・法についての構想とのあいだでせめぎあいがおこる。このせめぎあいの構造を分析し、法的責任の意味、管理の論法を問う。

目次

序章 社会における責任と法

第1章 <法的思考〉と社会学
 1.1 どのような責任について論じるのか
 1.2 <法的思考〉へのアプローチ
 1.3 <要件=効果モデル〉としての法的思考
 1.4 <目的=手段〉思考と法的思考との緊張
 1.5 ルール・原理・政策:Dworkinの法理論をめぐって
 1.6 <政策〉による論証と日本の不法行為訴訟
 1.7 社会における法:法の自律性と社会学

第2章 日本における不法行為責任の基本原理
 2.1 不法行為責任の偶有性
 2.2 不法行為責任の基本原理(1):権利侵害と違法性
 2.3 不法行為責任の基本原理(2):過失責任主義の役割

第3章 帰責原理はどのように正当化されてきたか
 3.1 過失責任主義とその無過失化
 3.2 不法行為責任の正当化

第4章 不法行為制度の〈目的>:機能の規範的選別と序列化
 4.1 不法行為制度を捉える視点:目的と機能の混在
 4.2 <主たる目的〉としての「損害填補・被害者救済」
 4.3 <副次的〉機能の不安定な位置付け:抑止と制裁
 [付論] <被害者救済〉理念からの制度評価と〈脱道徳化>

第5章 制裁性をめぐる争い:制度目的論の役割
 5.1 補償的賠償と懲罰的賠償
 5.2 民刑峻別論とその批判:制裁性否定の法学的背景
 5.3 制裁性を法的に否定する論理:目的論は何を可能にしたか
 5.4 慰謝料という賠償
 5.5 定期金請求で実現されたこと,されなかったこと

第6章 法的責任の道徳化はどこまで可能か
 6.1 法と強制:その関係の問い方
 6.2 不法行為責任を道徳化する論理とその難点
 6.3 修復的司法論における責任の道徳化
 6.4 強制される責任と自発性

終章
文献
あとがき
人名索引
事項索引

 とりあえずメールで、表題について言及したところ、「やはりそう来ましたか」という感じで返信をいただいた。そりゃそうでしょう。そう来ますよ。後輩とかなら一年間くらいはいじり倒したいところでしょう。w それは。でも、やっぱりそれは本人のご希望というよりは、編集者のご都合であることはわかっております。ありますよね、「・・・論のるーまそ」とか、古くは「・・・の社会理論」とか、図らずもシリーズ化したの。ちなみに、私の修士論文は『反省と想像力』であって、こっそり何を模したのかは明々白々だが、それは武士の情けである。
 で、肝心の内容だが、さすがに私には荷が重い感じもする。しかし、おりしも動機論についての論文を書いている、っていうか、書いてないけど書くつもり、なので、最初の章くらいはまじめに読んでみようかなどと思っている。