ヤロスタ

宇宙人

宇宙人

 辻泉さんから本をいただきました。本の書名は、上野千鶴子『快楽』本を模した感じになっていますが、ちょっと一ひねりしてありまして、それなりの意味はあるのでしょう。積極的に文化社会学を盛り上げている人々がいることは、ボクにとっては大きな希望です。
 野郎のスタディーズで「ヤロスタ」というふうに企画段階では、盛り上がっていたそうです。カルチュラル・スタディースな人たちは、カルスタというとけっこう怒りますし、ましてカスとかいうと無事ですまない感じでありますが、ヤロスタはそれなりに盛り上がっているところが面白いと思います。ただ「ヤス」というのは、まったく意味がない、とか、さらにはマッチョの研究だと、マスになるとか、くだらないことばかり考えてしまいます。

「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

内容

楽しく生きよう男たち。多様な生き方を見つめなおし、変化の激しいこれからの社会を生き抜くために新たな処方箋を提示する。<帯文>


ファッション、格闘技、ラグビー、ホストクラブ、性風俗、オーディオマニア、鉄道ファン、ロック音楽などの事例を取り上げ、楽しさの実態を内在的かつ詳細に記述しながら、「男らしさ」をとらえ直す。従来、家庭や労働における性別役割分業論を中心に否定しつくされてきた「男らしさ」に、肯定面をも含み込んだ現実的な方途を探る。

目次

まえがき
第?部 「男らしさ」のとらえ方
第一章 「男らしさ」への3次元アプローチ―楽しい男らしさの社会学へ(辻 泉)
第二章 「男らしさ」はどうとらえられてきたのか―「脱鎧論」を超えて(岡井崇之)


第?部 自己=身体性―男たちの自己鍛錬
第三章 部族化するおしゃれな男たち―女性的な語彙と「男らしさ」の担保(谷本奈穂・西山哲郎)
第四章 男たちはなぜ闘うのか―格闘技競技者にみる「男らしさ」の現在(岡井崇之)


第?部 集団=関係性―男たちの対人コミュニケーション
第五章 一人ぼっちでラグビーを―グローバル化ラグビー文化の実践(河津孝宏)
第六章 「男らしさ」の装着―ホストクラブにおけるジェンダー・ディスプレイ(木島由晶)
第七章 「エッチごっこ」に向かう男たち―性風俗利用における「対人感度」(多田良子)


第?部 社会=超越性―男たちのロマン
第八章 オーディオマニアと<ものづくりの快楽>―男性/技術/趣味をめぐる経験の諸相(溝尻真也)
第九章 なぜ鉄道は「男のロマン」になったのか―「少年の理想主義」の行方(辻 泉)
第十章 ロック音楽の超越性と男性性―ピエール・ブルデューの相同性理論を基に(南田勝也)
終章 「自分らしさ」から、とりあえずの「男らしさ」へ―ポピュラー文化からみた「男らしさ」の行方(宮台真司・辻 泉)
http://d.hatena.ne.jp/izumi2z/20090925/1253860835

 辻さんが、「楽しい男らしさの社会学」とおっしゃっていることには共感します。思いだしたのが、加藤典洋『この時代の生き方』で「大震災とボランティア」について論じているところで、大震災のときに文部省御用達のボランティアが正しさを横溢させ、市民とかじゃないと、非国民と言われかねないようなかんじになっているのが批判されている下りの最後で、今和次郎関東大震災の風景を観察したとき焼け跡に建った住居の木札をひたすらスケッチしたということが書いてあったことです。ついでに言えば、ハンセン病施設の研究をするのにロックバンドや博打に注目した研究なども想起されました。
 そんな意味から、セックスワークについてどのようなスタンスから、どのように論じるかは、かなり困難かつ大事な問題だと思います。編者、執筆者はかなり苦労して書かれていることが拝察されます。そしてかなり健闘されていると思いますし、「エッチごっこ」というギリギリの表現をひねり出した自意識に敬意を表するのはやぶさかではありませんが、やはりいかんともしがたい自意識が随伴してしまうのは、なぜなんだろうと、頭を抱えてしまいました。