コツコツととか、刻苦勉励とかゆうと、いかにもいかがわしい感じはするのだけれども、誰かが、特に若い人たちが、夢中になれるものを持っていて、ものごく楽しそうに打ち込んでいる姿を見ると、努力や根性や情熱などというやくざな括り方をする暇もなく、とても癒された気分になる。それが若者論に関心を持ったそもそものモチーフである。学生時代の調査実習でやった大学生の調査においても、「うちこむこと」が鍵語だった。もちろんそれは、そんなことができた時代ならではのことで、時代の制約があるとも言えるだろう。大学では、授業なんかでなくてもうちこむことがあればいい、と言って、笑って全員に優をつける先生が数多く、それが独特の授業文化となっていた。
以来、研究面のみならず、読書の面で、「青春記」を読むことは、至上の娯楽になっている。北杜夫『どくとるマンボウ青春記』、小澤征爾『ボクの音楽武者修行』、佐伯一麦『ア・ルースボーイ』、藤原正彦『若き数学者のアメリカ』などを、元気がなくなったときに読み、リフレッシュするのが習慣となっている。ただし、気分障害の人が読むと、帰って落ち込む原因になるかもしれないとは思うのであるが。
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かなりアクの強い本だし、なんか政治的にアレで読むには注意が必要という人もいるかもしれないし、またそんなものを読んでも学問とは関わりがないと言うアカデミシャンもいるとは思うのだが、キリスト教主義のリベラルアーツを標榜する大学で学ぶ人は、一度読んでみると良いのではないかと思った。神学部で大学院まで出た著者が、外交・諜報の実務に就く。そのなかで、専門技術を磨くと同時に、基礎となる教養的な知を深めてゆく姿には、強烈な刺激を感じた。
- 作者: 佐藤優
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自分自身でキリスト教についてわかったようなことを言うつもりもさらさらないが、宗教的な知、教養的な知と、実践的な知、実用的な知の関わりについて、いろいろなヒントを得たような気もする。ただし、なにかしらの心棒を通すという知的営為は、国粋主義とは峻別される国家主義と密接に結びつく可能性があるということは、まあ言うまでもないことかもしれない。
- 作者: 米原万里
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