スイーツ(笑)の社会学

 私は勉強のほうはからっきしかもしれないが、2ちゃんについてだけはけっこう自信あります、的なことを最初の授業で言って始まった本年度の講義なのであるけれども、最初でさっそく躓いた。なにかというと、そろそろ卒論の題目を決めなくてはならず、4年ゼミで一通り構想について話を聞いたのである。落語、マンガ、宗教、下北沢、浦安、映画館・・・と構想の核になるような鍵語を中心に話させたあと、「テーマ化」をめざした「セン引き」=一種の理論構成をするために板書をさせた。
 そのなかで一人、スイーツについてやりたいというのがいた。どういうふうにやるのかなと思って聞いたら、スイーツの分類とか文法とか言っている。おいおいおいおい、そっち系かよ、雑誌記事みたいなのでは通らないぞ。つーか、まあ極端な話そっち方面に詳しい親方に聞き取りするとか、って、そんなことしてなにになるかわからんが、ともかく手堅いやりかたしないといかん、みたいなこと言っていたら、はぁ??みたいな顔をしている。
 で、板書させたら「スイーツ(笑)社会学」と書きやがった。もう、なんだよ(笑)って、ごらてめーなめてんじゃねぇYO的な状態ではありませんが。「(笑)はとれ」というと、「とったらスイーツじゃねぇYO」とかいう。「いちびってんぢゃねぇぞ」みたいに思ったが、気持ちを抑えて「なぜだ?」と聞いたら、ぜんぜん違う意味で、2ちゃんで流行語みたいになったものだという。
 つまり、もともとは「デザート」とかゆっていたのが、トレンデー(ママ w)な雑誌に「スイーツ」とかあると、もう速攻スイーツとか言いまくるような女性の椰子がいると、「スイーツ(笑)」と皮肉るんだそうだ。でもって、そういうことをするゆるいヤツについて、「スイーツ脳」などということもあるらしい。まあいかにも2ちゃん的というか。
 別に「スイーツ」じゃなくても、「隠れ家的」(笑)、「婚活」(笑)とかいうこともあるし、またウィキによると「私さー、「恋空」観に行ったんだけど、すごい泣けたよ。スイーツ(笑)」というような、間投詞的な言い方もあるんだそうだ。ぼくらの青春時代だと、「ハマトラ(笑)」で「キメた(笑)」「ナウな(笑)」ちゃんねぇとデーツ、みたいなかんじで、バブル期なら「コムサ(笑)」「DCブランド(笑)」「プールバー(笑)」とかなるんだろう。和歌山事件だと「ミキハウス(笑)」、佐世保事件だと「ネバダ(笑)」とかゆうのかね。あと、「(笑)(笑)・・・」とか理屈こねる椰子がいそうだ。とかとか、いろいろ話にはなる。まあ卒論的には、「スイーツ(笑)」をカギ括弧で括って題名化しないとかなりまずいし、括ってもちょっと底冷えがしないことはない。
 でまあ、ちょっと思ったのは、学問の資質のこと。なんか哲学とか理論とか、やっている自分みたいなのに、けっこう幻想をもっていて、ナントカそっちでみたいに思っていた時代もあるわけだが、あまりない金で買った本でにわか知識つけて、なんとなく方向性とかはそっちいけそうとか思っても、結局「応用カタストロフ理論(笑)」、「ルネ・トム(笑)」とかの水準で、上っ面の世間話していただけで、魂込めてやり抜いたこととは大きく異なっていたなぁと思うのである。
 別の場所では、セコハンの資料にあきたらず、どん欲に読み切ってものを言っていた人たちも多かったのだろうし、同世代の社会学者でもスペンサー=ブラウン翻訳し、さらにはそれを博士論文に仕上げるみたいなものすごい人たちもいたわけで、その横で鼻くそほじりながら、知ったかぶりしていただけでは、とうていものになるわけがなかったよなぁ、と反省することしきりである。無駄になったとは思わないが、こつこつやっておけばよかったみたいな。ただそれにしても、「地道な農村調査(笑)」とか、「テーマを絞る(笑)」とか、「文献サーベイ(笑)」とか、、「レビューがない(笑)」とか、いくらでも言えるので、困ってしまうと言えば困ってしまう。