国際社会学科の社会学専攻について

 新しい学部体制がようやく本格的に走り出した。受験生の人たちからの質問に答える文章を考えなくてはならない。社会学専攻で、中国社会について学びたいのですが、という質問にどう答えるかという質問を考えているうちに、新しい専攻というのは学ぶ人にはいろいろな使いようがあることがわかる。それは、国際社会学科の他の専攻科目を自専攻の科目として、かなりの数履修することができるということである。
 まあ、以前より学科間の壁はかなり低くて、なかには他学科のゼミにまで押しかけて、コンパや合宿まで行った、とあとからうかがい、申し訳なくて平身低頭だったこともある。まあしかし、これはいわゆる自由選択で、ガッチリ必修科目をとった上での履修となる。これに対して、新学部では自由選択以外に必修で他専攻の科目を履修できるということになる。つまり、中国について学びたいなら、中国の外交史や、中国社会や、中国経済や、アジアの開発や、米中関係や、その他いろんな科目を自専攻の科目としてとり、さらに自由科目としてもとることができるということになる。
 旧体制の社会学科では、社会学コースと経済学コースに分かれていたが、数科目の必修とゼミさえとれば、何を理由してもよかった。で、経済学コースの学生で、数科目の経済学必修科目以外は、すべて社会学コースの科目を履修し、社会学で大学院を受験した人がいる。これと似たようなことになっているといってもよい。
 社会学専攻の必修は、概論、学史、調査法、ゼミ、調査実習である。これにより、社会学のオーソドックスな知識を学ぶ。調査実習は、演習別に演習に併設されたかたちで履修する。社会調査士の資格も取得しやすいカリキュラム体系になっていると言える。
 つまり、まとめると、国際社会学科の社会学専攻というのは、非常に条件の良いかたちで実習講義を受講し、普通に履修していれば無理なく社会調査士資格が取れ、かつ、経済学や法学などを学んで公務員試験に備え、卒論のために国際関係やエリアスタディ的な科目を卒業に必要な専門の単位として、また自由科目として、履修でき、つまりは社会学の基本的な考え方を学ぶ必修科目以外は、そういう科目で埋め尽くし、ほんでもって卒業できる専攻だということである。
 国際社会学科自体がそのようにして相互乗り入れによる自在な履修が可能になっている学科なわけだが、社会学専攻の場合は、社会学がしっかり学べるということと、実習が必修で社会調査士の資格が取りやすいということがポイントになる。要は力点の置き方の問題なだけで、言ってみれば、相互乗り入れをしている路線利用でスイカを買うか、パスモを買うかみたいな話かもしれない。あとは受験生の方に選んでいただければいいということになる。
 今年から新渡戸奨学金というのができて、かなりできる人たちのエンクロージャーに成功したということもできる。ただうちの場合、上位層をふやしたいという気持ちももちろん一方ではあるのだが、入学後に卒論が書けるように育て上げ、学生をのばすということにプライドを見いだしている先生も数多い。できる人が集まっている大学というふうに言われたくないと言えばウソになるのだろうが、入学後の実力の伸び方が大きい大学と言われたいと思っている先生も多い。じゃあ私の場合はどうかというと、そういう点ではあまりいい教師とは言えないと思うが、どちらかというとドロップアウトしかかっている人たちや、ちょっと学力がなくて、という人たちがゼミに集まってくることが多かったし、またそこにどういうふうにモチベーションを注入するか、ということに関心を傾注してきたとも言える。ただ、ここ何年かは、どちらかというとできる人がきて、メガトン級の猛者が来なくなって、まあ指導は信じられないくらい楽になったけど、でも正直もの足りない気もする。もちろん、選考とかになったら、前者を重視する他はないのだが。