新学部の社会学専攻について

 最後の授業になって、ある学生から、二つの英語の文章を読んで社会学科への進学を決めました、というような話が飛び出した。高校時代に読んだのは抜粋だが、卒論においてはそれを全文手に入れて、翻訳し、それに基づいた論を序論としている。そういう大事な話は、もっと早く言って欲しかったが、それを聞き出せなかったことに、自分の問題もあるのだろうなぁと反省した。内容的にも、新しく立ち上がる学部の教育において、非常に参考になるものだった。国際社会の貧困の問題と人間の幸福感の問題を考えるために、私の演習を選んだということの意味を反芻することで、いろいろな将来の教育方針がみえてくるような気がした。新設学部の受験を、みんなどんなモチベーションで決めるのだろうか。そしてどのように納得して入学を決めるのだろうか。
 東京女子大学の国際社会学社会学専攻の必修科目は、国際社会論、国際社会基礎演習、社会学概論、社会学史、社会調査法、1〜4年ゼミ、社会調査実習である。オーソドックスな社会学的思考法、調査方法論をしっかり学ぶことが重要であることを、必修指定した科目が物語っているように思う。概論、学史などは通年で受講することが必修となっている。先日も言ったが、調査実習はゼミ別の小クラスとなっている。(経済学専攻、国際関係専攻でも、社会調査士資格に対応するために実習のクラスが設けてあるが、これは今のところ一クラスとなっている)。
 国際社会論と国際社会基礎演習は、専攻を超えた学科合同クラスで行われる。そのことにより社会科学的視点は深化するだろうし、それとの対比で自分たちの専門である社会学的視点も明確化されるだろう。今までには考えもしなかったようなモチベーションでゼミを選び、考えもしなかったようなテーマで卒論を書いてゆく学生と出会えるとすれば、それはかけがえのない体験になるように思う。
 選択科目は、社会調査法(応用編)、国際社会学、比較社会学、労働社会学、経営社会学、家族社会学、地域社会学、都市社会学、政治社会学、医療社会学、福祉社会学、医療社会学現代社会論、社会意識論など広い範囲の科目がならぶ。地縁、血縁、近代的な合理的組織といった基本的な関係性を中心に、応用的な講義がならんでいる。小さな大学の学生定員65名の学科なので、あれもこれもというわけにはいかないが、演習のカバーする範囲はほぼカバーできるかたちになっている。
 私自身は、概論や文化、社会心理系の科目を担当することになる。元々は、私は社会心理学という科目を担当していたが、心理学、コミュニケーション学との対比において、社会意識論、文化社会学としてそれを取り扱うかたちに落ち着いている。南博の弟子の弟子ということからすると、強引に名乗ることもできたとは思うし、社会心理史というような視点、社会心理学の理論的視点などを学会においてなにかものを言うとすれば、固執しなければならなかったのかもしれないが、主には社会学会で仕事をしているので、社会心理の社会学などと主張すればよいのだろうと思う。
 みんなの話を聞いてみると、他学科などの授業もよくとっている。今回は、経済や国際関係の授業は、自分の専攻科目としてカウントすることもできるので、いろいろな学びを創造することができるように思う。明治神宮の結婚式を語ったときに、ラックスのレシーバー使って良質の音楽を音を絞って聴くような滋味がある、というような気障なことを言ったが、そんなふうな大学づくりをしていけたらどんなにいいだろうと思う。