『ブリッジブック社会学』

 一応学会の備忘的な日記を書いて、たまっていた郵便物を見に行ったら、論及した『ブリッジブック社会学』が棚に入っていた。たぶんこれは、これまでの経緯からして、コーキタンが送って下さったに違いないと確信はしたのだが、書状が玉野先生名義だったので、迷いに迷ったあげく玉野先生にもお礼状を書いた。本の概要だが、下記の通り。なんか下のリンクをクリックすると、昔のあじビラのようなものすごいセンスの出版社のちらしみたいなのが出てくる。

社会学者の数だけ社会学がある」なんていうのはウソだ!!
マルクスウェーバー・デュルケム・ジンメルの「1+3」で学べばすべてがわかる!!

高校と大学を架け橋するブリッジブックシリーズの一巻!

ブリッジブック社会学 (ブリッジブックシリーズ)

ブリッジブック社会学 (ブリッジブックシリーズ)

エビぞりになって読むべし!!

しかし、ブリッジブックというと、どう考えてもレスリングや体操のアレを思いだしてしまう。吉田戦車のイラストでも使えばよかったのに。

○執筆者(五十音順)

小宮友根(こみや・ともね)
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。現在、明治学院大学非常勤講師など。


鈴木弘輝(すずき・ひろき)
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。現在、都留文科大学非常勤講師。


玉野和志(たまの・かずし)東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。現在、首都大学東京人文科学研究科社会行動学専攻社会学分野教授。


堀内進之介(ほりうち・しんのすけ首都大学大学院博士前期課程修了。現在、首都大学東京大学院博士後期課程、現代位相研究所・首席研究員。


山根清宏(やまね・きよひろ)現在、東京都立大学大学院博士課程。

目  次

第1章 社会学の目的はただひとつ−はじめに 社会学はおもしろい、けどよくわからない 1  「社会学者の数だけ社会学がある」というウソ 1  マルクス政治経済学という壁 3  社会学の基本的な原理 5 ヴェーバー、デュルケム、ジンメルに尽きる社会学の発想 6   社会学の目的はただひとつ 9 最近における社会学の困難 10 それでも私たちは1人では生きていけない 12 本書の成り立ち 13
第2章 近代の成立と社会学の誕生−マルクスによる資本主義社会の解明 1 社会学はいかなる状況から生まれたか 15 社会学誕生の歴史的背景 15 前提としての近代社会と経済学の成立 15 マルクスの挑戦 16 2 マルクスが明らかにした近代社会の原理 17 資本主義社会としての近代 17 資本主義の至上命令 19 3 マルクスにおける経済学と社会学 21 経済学批判の根拠としてのマルクス社会学 21 革命による社会主義社会へと一挙に飛躍したマルクス 22 もうひとつのマルクスを継承していった社会学の発展 24
第3章 意味に依拠し、法制度に対置される社会−ヴェーバー社会学 1 マルクスヴェーバー 28 マルクスを認め、マルクスを越えようとしたウェーバー 28 ヴェーバーにおける経済と社会、そして政治と行政 31 ヴェーバーにおける社会学−政策科学の原点 33 2 資本制と官僚制 −近代の宿命 34 ストイックで、ペシミスティックなヴェーバー 35 資本主義の至上命令と官僚制の鉄則 36 3 ヴェーバーの理解社会学 38 * 社会的行為の特質 38 主観的な意味づけへの着目 38 カリスマ、宗教、政治の位置づけ 39 4 ヴェーバービスマルク、そしてニーチェヒトラー 40 ビルマルクの遺産との対決 41 行動する議会 42 ヴェーバー亡き後のドイツの悲劇 43
第4章 社会的な共同性は実在する−デュルケムの社会学 1 デュルケム社会学の位置 47 意外にマルクスと似ているデュルケム 47 社会の実在を信じたデュルケムの客観主義と集合主義 49 2 デュルケム社会学の原点 −『宗教生活の原初形態』50 人類学者としてのデュルケム 50 「未開社会」の法と集合表象への着目 51 3 デュルケム社会学の展開 −『自殺論』と『社会学的方法の規準』 52 近代化とアノミー 52 デュルケムの方法論−計量分析とモノグラフの原点 53 4 デュルケム社会学の展望 56 新しい社会のあり方−有機的連帯 56  教育と職業集団への期待 58 
第5章 人びとの相互作用からみえてくる社会−ジンメル社会学 1 異彩を放つジンメル 61 哲学者としてのジンメル 61 心的相互作用への着目 62 ジンメルの形式社会学 63 2 社会は構造ではなく過程だ 65 人びとの相互作用によって再生産される構造 65 社会の実在ではなく、形成を問題にしたジンメル 67 3 形式とは何か 68 内容と形式 68 ドイツ形式社会学としての展開 69 記号としての形式 70   ミードへの展開 71
第6章 シカゴとコロンビアの結婚−実証主義社会学 1 アメリカにおける社会学の展開 76 シカゴ学派からコロンビアへ 76   アメリカン・サイエンスとしての展開 78 2 シカゴ学派社会学 80 タマス、パーク、バージェス 80 シカゴ・モノグラフの蓄積 82 3 ラザースフェルドとコロンビア大学社会学 84 ラジオ聴取者、大統領選挙、アメリカ兵 84 マートンサーベイ調査 86 科学としての社会学と社会調査の確立 89
第7章 「社会構造」はどこにあるのか−現象学的社会学の挑戦 1 パーソンズの「社会構造」92 「パーソンズ以後」の現在 92 「モノ」とは違う「社会」 93 「モノ」のようでもある「社会」 93 「万人の万人に対する闘争」 94 「共通の価値体系」にもとづく秩序 95 あらゆる「社会構造」を扱える一般理論の完成 96 2 パーソンズへの批判 97 シュッツの現象学的社会学 97 シュッツからパーソンズへの手紙 97 研究者から見た「行為者の主観的観点」 98 機械のような人間 98 なぜ「主観的観点」が問題になるのか 99 行為の動機を反省的に明らかにする必要性 99   「すれ違い」のインパクト 100 「社会構造」と現実との関係   「難解さ」への疑問 − ラディカル社会学 101 無駄な難解さ   何のための抽象化なのか   シンボルを介した解釈−象徴的相互行為論 103「要約」だけでは意味がない 103 「社会構造」の一般理論の衰退  104 3 「批判」の先に何があるのか 104 残された問題 104 ふたたび「社会」のほうへ 105 
第8章 日常的な世界の成り立ちをとらえる視座−意味学派の可能性 1 さまざまな「意味」学派 109 * 相互行為という社会的秩序 110  共在の技法 111 儀礼としての相互行為−デュルケムからゴフマンへ 112 エスノメソドロジ−社会を織りなす技法 113「会話」をするための方法論−会話分析 115 構築主義の挑戦 117  社会問題の定義から人びとの活動の研究へ 118 2 人びとが具体的に社会を織りなす技法への着目 120 いま、ここで生かされる社会学理論 121 3 「社会」に対する態度 122  社会を知ることと変えること 122
第9章 社会システム論のゆらぎ−パーソンズからルーマンへ 1 デュルケムの社会学と機能主義の人類学 125 「機能」概念のルーツ 125 「機能主義人類学」の発展 126 2 パーソンズの「機能主義社会学」 128 パーソンズの研究歴 128 機能主義の時代背景 130 アメリカン・デモクラシーと「機能主義」130 3 ルーマンによる批判と革新 132 ルーマンの「機能主義」 133 パーソンズとの相違点 134 ルーマンから見たパーソンズ 136 ルーマンの「価値多元主義」 137
第10章 マルクスを越えて−ハーバーマスの苦悩 1 ドイツの知識人としてのハーバーマス 141 ドイツ的思考伝統の歴史的背景 141 官僚の対等とその顛末 143 フランクフルト学派第一世代の批判理論への挑戦 144 ハーバーマスの改革−第仁世代へ  2 ハーバーマスの諸見解 146 "公共圏"という空間と消失−公共性の構造転換 146 公共圏の正常なはたらき−福祉国家と正統性の危機 148 公共圏への処方せん 150 生活世界の植民地化への警告 151 コミュニケーションの回路 153「変換器」としての法 154
第11章 集合表象から「ハビトゥス」へ−ブルデューの試み 1 変化するブルデュー−代表的なブルデュー理解 158 ブルデューの再生産論 159 ブルデューの「ハビトゥス」論 160 2 デュルケムからブルデューへ 162 集合表象からから象徴的支配へ 163 象徴的支配とハビトゥス 164 『資本主義のハビトゥス』 165 3 怒れるブルデュー 168 グローバリゼーションとブルデューの立場 168 ブルデューが「実践」する理由 170
第12章 人びとの社会的結びつきを取り戻す−コミュニティからネットワークへ 1 古典的な社会学の対概念 173 近代社会の基本認識 173 コミュニティの定式化 175 2 コミュニティ研究の展開 176 シカゴ学派とコミュニティ 176 日本のコミュニティ研究 178 3 単純な二項対立を超えて179 コミュニティからネットワークへ 179 コミュニティの解放か、拡散か 180 4 社会関係資本への着目 182  コールマンの社会関係資本 183 パットナムの社会関係資本 184
第13章 社会に対する国家の関与−フーコーとギデンズ 1 〈現在〉への問い 188 〈現在〉への問いから出発する2人の理論 188 2 フーコーのリアリズム 考古学から系譜学へ 190 権力概念の刷新 193 生と権力 194 3 ギデンズのアクティヴィズム 197 人びとの社会への解釈を再解釈する−二重の解釈学 197 再構成し続けていく社会 −構造化理論 198 再帰的近代と「生きることの政治」 199 「第三の道」 −国家・経済・市民社会の新たな同盟 201
第1章 社会と国家の距離感−日本における社会学の位置 1 日本における社会と国家 206 市民社会の未成熟? 206 日本における社会学の位置 −「社会」は危険思想  209  戸田貞三の悲哀 210 古来ただ国家があるのみで、社会なぞない 212   ヨーロッパでは革新でも日本では復古になってしまうこと 213 2 社会の学としての社会学と国家の学 214 国家の学としての政治・経済・法学 214 社会が崩れたときにどうなるか 215 社会的なつながりを嫌う人びと 216  3 社会はそこにあるのではなく、つくるものであること 218 ※それでも、人は1人では生きていけない 218 だから、自分できめなければならないこと 219  社会学の効用 220 
http://www.shinzansha.co.jp/081120bbshakaigaku.html

社会学理論というのは、いろいろあるとかゆうのは「うそ!」と喝破し、「マルクスウェーバー・デュルケム・ジンメル=1+3」でという趣向は、実に明解である。とは言え、それはひとつのモチーフともいうべきことで、全体の論述は詳細である。やはり最近の学生のニースを考えると、予備校的な知みたいなものがベースにあり、シンプルなモチーフ的な知識をどんと与えられ、あとは考えてみろ、と言われても不安になるようだ。その点本書は、盛り込み加減が工夫されている。知識も新しい。おそらくは、市民向けの講座などでの経験を生かした面もあるのだろうと思う。ひとつだけ不満を言えば、索引がちょっと機械的かなぁという点くらいかなぁ。