見田宗介『まなざしの地獄 ― 尽きなく生きることの社会学』

 今日は非常勤の日で、成城学園から、池袋へ。それから寮の北301・308の会というのに出席するために月島へ。旧交を温める。1974~1976に小平の一橋寮の北3階に住んでいた者の集まりである。長野県出身の先輩2人が中心となったグループで、年2回やっていたのだが、同窓会年齢になってきたということもあり年4回にするかということになってきている。北3階の集まりにしてもよいとか、そこに限らなくてもいいではないか、などといろいろ意見はある。
 来年度のゼミのガイダンスも徐々に近づいてきて、シラバスも提出しなくてはいけないので、なにを書くかなぁと思い、非常勤先への移動の道すがら池袋の本屋をぶらついた。ゼミの主題は、社会心理と文化の社会学でここのところ固定している。そのあたりに関心をもつ学生が多いからだ。今の3年は、宗教という人もいるが、学会の分類では宗教というのは文化と同じ研究領域となっている。
 1)相互行為論的な自己論、動機論に関わる文献、2)第二次世界大戦後の社会心理史、文化の社会史に関わる文献、3)相互行為論的な調査法に関わる文献を選ばなくてはならない。一年間でそんなに読めるのか、と思うむきもあるとは思うが、うちの大学の社会学教育においては、三年次演習と調査実習がぶち抜きになっていて、主題別に調査実習が設けられているので、一部の作業は実習(モノグラフの読解や実習、報告書づくりまで)として行うことになるのである。3は、桜井厚『インタビューの社会学』にほぼ決めている。1は、『自己と他者の社会学』前半と動機の語彙論と関わる理論と調査文献の精読で、さて2をどうしようかと考えていた。『友だち地獄』、『不可能性の時代』、『親米と反米』などが脳裏をかすめた。その時に眼についたのが下記の本である。

まなざしの地獄

まなざしの地獄

内容

 日本中を震撼させた連続射殺事件を手がかりに、60~70年代の日本社会の階級構造と、それを支える個人の生の実存的意味を浮き彫りにした名論考を復刊。最近の事件を考える上でも示唆に富む現代社会論必携の書。解説・大澤真幸
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309244587

目次

まなざしの地獄 ― 尽きなく生きることの社会学
望郷の歌
あとがき 見田宗介
解説 大澤真幸

 既出の論考二つながら、見田宗介のあとがき、大澤真幸の解説を読むために、すぐに購入した。見田のあとがきには、『現代社会の社会意識』に「まなざしの地獄」とともに数理的な論文がおさめられている理由が書いてあって興味深い。大澤の解説には、統計の見田宗介的読解ということを中心に、高度成長期と今日の社会との比較考察へ誘うような論が展開されている。テキストとしてもコンパクトで使いやすい。
 これを、『友だち地獄』、『不可能性の時代』と比較対照して読んだら面白いだろうなぁと思っている。めくってみると、ちょっとテキストには難しいかなぁと思わないこともない。ただ、授業用のレジュメはあるので、こちらでプレゼンしてしまう手もあるかなぁとも思う。順序的には、土井→大澤→見田だろうなぁ、などと思ってみたりするが、なかなか決心がつかない。