スーザン・ジョージの翻訳新刊

 スーザン・ジョージって、映画じゃね?やっぱ、『わらの犬』だったけ?あの人けっこう小夜な本も書いてるよな、みたいなことをゆって、随分とバカにされたことは記憶に新しい。言わずとしれたベストセラー『なぜ世界の半分が飢えるのか』の著者であり、見田宗介の『現代社会の理論』などと併読するとよい本のひとつだろう。どのようなイデオロギー的な立場に立つにしても、こういう本をガッツリ読んでおくことが、社会科学を学ぶ基本だあ、と改めて思うと同時に、自分の読書傾向のかたよりを実感した。
 そのスーザン・ジョージの新刊が出て、翻訳者のひとりが実は↑上にもある共著者の中村氏であり、今日大学に届いていた。ありがとうございます。題目は、『アメリカは、キリスト教原理主義新保守主義に、いかに乗っ取られたのか? 』。ンもう、小夜垂涎の題名でございまして、腰巻き=帯の文章もパッツンパッツンの歌舞伎まくりでございます。

アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?

アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?

出版社のご紹介

 ブッシュ後、アメリカは変われるか?デモクラシーは姿を消し、超格差社会の貧困大国となり、教育の場では科学が否定され、子供たちの「愚鈍化」が進む。アメリカは“彼ら”の支配から脱出できるのか。

目次

序文にかえて いかにしてキリスト教原理主義新保守主義は、アメリカを乗っ取ったのか?
第1章 つくり変えられた常識 いかに右翼は文化的ヘゲモニーを握ったのか?
第2章 外交政策ネオコン
第3章 キリスト教右派による「長征」
第4章 風前の“啓蒙の灯” 科学への攻撃
第5章 ロビイストと権力 ビジネス界の圧力がつくり出す格差社会
おわりに なぜ本書を執筆したのか?
訳者解題 森田成也

パッツンパッツンの腰巻き

 いかにして、彼らは、アメリカ人を洗脳し、アメリカを変革していったのか?かつての世界の憧れの国は、根底から変わってしまった。アメリカン・デモクラシーは姿を消し、人口の13%が飢え、16%が医療保険に入れず病院に行けない超格差社会となり、教育の場では宗教が科学と入れ替わろうとしている。これは、“彼ら”が「四つのM」(マネー、メディア、マーケティング、マネージメント)を駆使し、財団、シンクタンク、ロビー活動、政党、弁護士、活動家組織を通じて、じっくりと戦略的にアメリカを乗っ取る「長征」を行ってきた結果である。本書は、米国社会と権力にメスを入れ、“彼ら”の戦略と戦術を詳細に分析した、欧米で話題の書である。

ものすごいエネルギッシュな文章で、日本社会の近未来を描いているようにも見える。
ミルズってこんなかんじだったんだろうかなぁ、などと思いつつ少しだけめくった。四つのMって、これもまた3つの袋系かよとか思ったりしたが、「とうだいのおと」よりは、パシュッと決まっていると思う。しかし、筆致はすごいものがあります。アダム・スミスフルボッコみたいなカンジで、なんか勢いだけでいってねぇか?と思わないこともないし、私のようなどっちつかずのほうが心地よい人間には、決めつけ調はちょっとなぁと思うところもある。しかし、こ気味よい舌鋒は、それなりの鑑賞に値すると思うし、今の日本社会を考えるうえでも、重要な問題提起を多々含んでいるように思う。詳細なインデックスがついているのもありがたい。禁欲しないで、解題ももっとガッツリ書いて欲しかった。