岩波明『心に狂いが生じるとき』

 一通り原稿が書けたので、本屋まわりなども再開した。昔は、新刊本の切り口をながめているだけで、想像力ががんがん刺激されたものだが、最近は最もエッジが立っているはずの新書などもみても、トキメキを感じない日もある。これは、まあたぶん私だけの問題でもないと、信じているのだが。w と、岩波明の新刊が出ていたので、買って一気に読んだ。この人のものと、岡田尊司の著作は、『心理学がよ~くわかる本』というのまで含めて、かならず買って読む。だいぶ傾向が違うが、同業の社会学者はハードボイルドな抑制や電気ショックの模様の記述や、独特のゲーム脳のはなしなどを見ただけで、読まないという人たちもけっこういるだろう、と思われる点では共通していると思う。しかし、この2人の著者が書いている「現場で向かいあってきたもの」の記述からは、他にはない示唆を得ることも多いのだ。

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告

内容

何が「引き金」だったのか――。誰をも襲う精神病の、その前触れとは?

 突然訪れたかに見える、精神の変調。そこには日常に潜む、ほんの些細な「きっかけ」が――。人はどのようにして「心の病」に蝕まれるのか? 狂気への境界を越えるとき、人には何が起こるのか? 「うつ」「アルコール依存」から「統合失調症」まで、重度へと陥った具体例を数多く提示。臨床経験豊富な現役医師が詳細に分析する。

目次:

第1章 依存の果て
第2章 架空の敵
第3章 罪なき殺人者
第4章 摂食障害というゲーム
第5章 無垢な逸脱
第6章 器質性精神病
第7章 精神鑑定の嘘
第8章 うつ病不都合な真実
第9章 アナンカスト

 一連の著作は、精神科医が現場の話をわかりやすく一般読者に伝えるというだけではなく、精神病理をめぐるいろいろな問題に対する実践的な問題意識に貫かれている。本書も、裁判員制度の導入を前にして、いろいろと整えるべきことがある、学ぶべきことがあるというようなことが書いてあり、著作のミニマムの作品性となっている。ものを書くときは、やはりこういう受け止められ方みたいなことをキッチリさせて、書くことが大事だなぁちう、あたりまえのことが読後感として残った。あつかっている問題の違いもあるのだろうが、『狂気という隣人』などと比較して、筆致の鋒が丸みを帯びてきたような気がしないこともない。それはちょっと読者としては、残念な面はあるが、逆にいろいろな長所も創発しているのかもしれない。ちょっと、8章は他の章に比べるとイマイチな気がしたが、もしかするとこれが目玉の論考なのかもしれない。
 麻生総裁誕生。総裁選の模様をテレビタックルでやっていたが、石破さんの「怖い顔」シリーズには笑った。選挙演説の照明、保育園に行って園児に自分で「怖い顔」といい、そして遠慮会釈なくフリーズする子供たち。しかし、明日の外国大衆紙などは、森三中唯一毒女の渾身の梅奴ネタばりの「asshole アッソー」ネタでおーもりあがりなのかな、と思ったりもするが、人の名前は笑ってはいかんのだ。逆もいろいろあるからね。スロベニアかなんかの、○○○ッチ選手とか巨人にいた○○○好き選手とか。有識者に教わったのだが、イチローも「itch(痒い)low(下半身)」で、寛平ちゃん的に言えば、「○○○かいーの」になるらしいし。