『蟹工船』の読み方

 なんかそこら中で平積みになっているから、どういうこっちゃいと思っていたんだが、『蟹工船』が鬼売れで、なんと35万部も出ているらしい。というか、これまででも、年に5000部売れているというんだから、半端じゃないよなぁと、じっと手を見たりした。ワーキングプアに関連づけられているけど、読者層がどのようなものかはわからんちん。もしかすると、佐伯一麦の『ア・ルースボーイ』なんかは注目されるべきなんじゃないかとか思っていたが、いきなり『蟹工船』にいってしまうところが、今の時代のベタなところなんだろうな。せめて、『セメント樽の中の手紙』ではないのとか思うのは、今や感覚は古いんだろうな。などと思う。

 小説『蟹工船』が売れている。これまでは年に5000部程度の売り上げだったのが、今年はすでに35万部以上を増刷し「異例の売り上げ」(新潮社・文庫営業担当・本間隆雅さん)を叩き出しているとか。過酷な労働の様子や、労働者が資本家に虐げられる内容が読者の共感を呼んでいるそうだ。国語や歴史の授業で「プロレタリア文学」の代表として習ったから、なんとなく題名ぐらいは知っているものの、内容についてはよく知らない。いったいどんな小説なんだろう。実際に読んでみた。


「おい、地獄さ行くんだで!」…という強烈な書き出しからはじまる本作。ざっくり内容を説明すると、「過酷な環境の蟹工船カニを捕まえてその場で缶詰に加工する船)で働く労働者たちが団結し、労働環境改善を求めて立ち上がる」という話。登場人物たちは冒頭の言葉どおり「地獄」のような環境の蟹工船で働かされる。雪が降り、波の高い、危険なオホーツク海で漁夫たちは作業を続ける。漁は過酷を極め、遭難や懲罰(暴行)で死人も出るほどだ。しかし漁の監督は「お前らの命より、川崎(作業用の小船)一艘の方が大事だ」と言う。漁夫たちは十分な栄養も摂れず、逃げ出せない閉鎖環境のなかで、栄養不足から脚気にかかり、次第に追い詰められていく。仕事を怠けようものなら、厳しい罰が与えられ、徹底的に働かされる。その様子が実に悲惨なのだ。働いても働いても、自分たちは決して楽にならず、監督や船長の利益が増えるだけ。79年前の小説ながら、確かに現代のワーキングプアに通じるものがある。


プロレタリア文学」っていうと難しく感じるけど、作中の人物が言うには、「あなた方、貧乏。だからあなた方、プロレタリアート」ということになるそう。


つまり「プロレタリア文学」とは、言いかえると「貧乏文学」ってことになるのかも。そんな小説が売れちゃうのが今の社会か…。でもなんだかなぁ、やるせない。
R25編集部)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=532125&media_id=29

 読み進まなくても、「おい、地獄さ行くんだで!」と言う書き出しを読み返すだけでも、かなりものを読んだ気になるんじゃないだろうか。とは思ったりもする。これに限らず、小林多喜二はものすごく上手い。読み返してみてそう思った。随所に炸裂する文章がある。それを拾い読むことで、立ち上がるリアリティに期待するというような作意があったのかもしれないが、作品の価値はそれとは別のところにあるんじゃないかと思う。プロレタリア文学もへったくれもなく突き抜けてゆくものがある。どんな時代にも文学史の必須知識であった理由が実感されたりする。
 これは前に書いたことなんだが、私たちの世代的には、というか私たちのグループでは、『蟹工船』の読みどころは、たった一点だった。そして、かの豊崎由美さまもそこのところにしっかり言及されていて、ktkrというカンジだった。『百年の誤読』という本を読んだときのことだ。

 それはともかく、私はあるひとつの期待を持って、目次をおった。それはなにか?狂い氏にした島田清次郎ぢゃねぇよ。それもあったけどさ。答えは、『蟹工船』である。ホワイ?とゆうかもしれないけど、ちゃねらーの由美ちんたちがこれをどう斬っているか?あそこに言及しているか?そんな期待をもったのだ。そしたら、もう一番でかいAA貼りたいくらいにキターですた。もろある。速攻そのページを開くアテクシ。わくわく。そうしたら、さらにフォルテッシモにキターでもろありますた。しかも言及した豊崎は、さらっと流しているが、岡野は丁寧に注までつけていやがる。

「勃起している睾丸(ルビ:きんたま)」(注)(『蟹工船』より:inainaba)


「(注):幸か不幸か僕はまだ睾丸が勃起しているのを見たことがない。凄いぞ海の男・・・」(岡野)。

 私はあまりの感動に、笑い転げそうになったが、グッとこらえ、きょろきょろと周りを見回した。しかし、また笑いがこみ上げてくる。すばらしい。『蟹工船』は、これ以外に語るところがないと言っても過言ではないのではないかとすら思う。
http://d.hatena.ne.jp/inainaba/20050320/p1

 ちょっと前まで、男性が借金をすると「マグロ船にのるか、ごるぁあああ。あんこちゃんにされるでぇ」とかゆって脅されたりしていた。マグロの神様である山田重太郎の足下にはおよばないものの、実際稼いできたという話も聞いたことがある。