間々田孝夫『第三の消費文化論』

 ゼミなどをして、今日は実習形式なので、ちょっとトイレに中座した間に、郵便物の棚をのぞいたら、間々田孝夫先生より本が届いていた。本日の恐縮3連発。まるで「コミック雑誌なんかいらない」状態。ありがとうございました。タイトルや副題の「モダンでもポストモダンでもなく」に、言いたいことの要諦ははっきりと明示されている。行き届いた文献サーベイ、骨太な理論構成、豊富な調査研究の裏付けなどにより、消費の問題について社会学的研究を展開してきたことは言うまでもないだろう。
 消費社会論というと理論的に歌舞伎まくる作品もあるし、キャッチィなコピーで鮮明な切り口をみせる作品もある。また、まばゆいばかりのファクトファインディグスを並べる作品もある。そうした作品とは異なる抑制された端正な筆致に、ひとつの美学のようなものを感じていた。今回あとがきに、一端が伺える一文が書き付けられている。「ポストモダン消費論に特有の、消費の非合理的、非構造的価値を一方的に強調し、消費現象の全体をみようとしない姿勢を批判的に眺めてきたし、学をてらい晦渋である割に、しばしば支離滅裂で論旨が不明瞭な文章を嫌悪してきた」。

◇間々田孝夫『第三の消費文化論』ミネルヴァ書房

内容

 われわれの消費はどこへ向かうのか?マクドナルド化グローバル化、脱物質主義の中から浮かび上がる現代消費文化の実像とは?

目次

 まえがき
 第一章 ポストモダン消費論の脱構築
 第二章 消費文化とマクドナルド化
 第三章 グローバル化と消費文化
 第四章 消費記号論の彼方
 第五章 脱物質主義の消費文化
 結 語 第三の消費文化に向けて

 シュミラークルから、マクドナルド化グローバル化、消費文化の経済学、消費文化の倫理学といったオーソドックスな論点について論を展開し、脱物質主義という議論に逢着している。三浦展氏だけでなく、橋本努氏も言及されていたボボなどへの言及もある。丁寧に読めば、資本主義というものの要と関わる議論について、多くのことを学ぶことができるようにも思うし、他方で、社会学部で消費を勉強することということについて、標準的な見通しを得ることもできるはずである。冷静な道筋がつけられたことで、こうした議論は大きく前進するだろう。間々田先生が、うちの女子大で「現代社会の理論」という講義を担当してくださっていたことを思いだした。同名の見田宗介氏の著作とも深く関わる議論であり、それを建設的に研究し、政策ベースに下ろしてゆく手がかりもここから得られるのではないかと思う。
 とりわけ、先日の学会で、グローバリゼーションをめぐる議論をして、いくつかの争点を見つけて、反芻しながら楽しんでいるところだったので、その辺と照らし合わせて考えてみようと思った。
 あと一つ、略歴で富山県に生まれ、「東京に転居」と奥付に書いてあったのがとても印象的だった。