『社会学』(有斐閣)

 大学に来たら藤村正之氏から今話題の『社会学』も届いていた。大学内外の激務をこなされているなかで、ご配意いただいたことは恐縮なことであり、本当にありがたいことであった。ありがたきものしうとにほめらるる・・・のありがたきであるとも言える。つまり有り体に言えば、もらえるとは思わなかったのである。面倒見のいい義理堅い人ではあるわけだが、仕事が忙しくてさすがに気が回らないだろうと思っていたからだ。もちろん自分で買ってもいる。

長谷川公一・浜日出夫・藤村正之・町村敬志/著『社会学New Liberal Arts Selection

社会学 (New Liberal Arts Selection)

社会学 (New Liberal Arts Selection)

 社会学を学ぶすべての人へ。現在,社会学として学ぶべき内容を網羅しスタンダードを呈示する,待望の本格的テキスト。現実社会と関連した問いかけから説き起こし,概念を丁寧に解説。「社会はどのようにあるのか」を問い続ける社会学の醍醐味を伝える。〈2色刷〉


〈目 次〉
 序 章
第1部 行為と共同性
 第1章 親密性と公共性
 第2章 相互行為と自己
 第3章 社会秩序と権力
 第4章 組織とネットワーク
 第5章 メディアとコミュニケーション
第2部 時間・空間・近代
 第6章 歴史と記憶
 第7章 空間と場所
 第8章 環境と技術
 第9章 医療・福祉と自己決定
 第10章 国家とグローバリゼーション
第3部 差異と構造化
 第11章 家族とライフコース
 第12章 ジェンダーセクシュアリティ
 第13章 エスニシティと境界
 第14章 格差と階層化
 第15章 文化と再生産
 第16章 社会運動と社会構想
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/2007/11/post_36b8.html

 机を並べて勉強した人が、同世代のエースとして標準的な教科書=体系書と関わったことは感無量なものがある。何度も話したことだが、藤村氏は一年後輩だが、卒業はいっしょで、いっしょに大学院に入学した。卒論はたしか有機農業についての調査研究だったと思う。浜谷正晴ゼミでリンドのミドルタウン研究を通読した。訳がなかった時点だが、藤村氏は一切ねをあげなかった(私は月一くらいで泣きが入った)。佐藤毅ゼミでは牢名主のような先輩たちの薫陶を受けた。北海道の学会に行く途中、盛岡のご実家で泊まらせてもらったりもした。楽しかったのだが、どうしてもつきたい先生がいるということで一年で退学し、筑波大の院に再入学された。
 筑波に行ってからも電話で数量的な調査研究の重要性の話や、初めての非常勤の体験談などをうかがったし、佐藤ゼミの先輩たちと車で筑波まで泊まりに行ったりした。春休みに図書館で、「向こうに行ったらこういうものをじっくり読む時間がなくなる」と言って、コントを熟読していたのが記憶に残っている。藤村氏のめざしていた学問がおぼろげにみえたような気がしたし、今回のテキストには一つの達成感を感じているのではないかと思われる。
 テキストとしてはかなり大部なものだが、コクのある読み物と、用語の解説と、社会学的思考のフォーマットをするための整理表、アジェンダがたくさんあげられていて、概論などを整然と勉強する人には大きな刺激になるだろうと思う。体系志向ではない、無手勝流の実戦志向な人も、ざっくりした入門書や、ルポルタージュを読みながら、読みほどいていけば、きっと参考になるはずだ。
 と思ったら、最初に読み方がテーブル化されていた。こんな人はこう読め、と言うことで類型化があり、かつ講義の日程をどう組むかまでが示されている。これ以外にも、鳥瞰のための工夫が施されている。この最初の部分と目次立てに最大の特徴はあるだろう。索引も丁寧だ。いつも学生に言い、ほとんど無視されているのだが、自分で索引をつくりながら読むとすごくいいと思う。今はパソコンだってあるわけだし。