『新版 社会学のエッセンス』

 大学に来て、たまっている郵便物をみたら、友枝敏雄先生より本が届いていて、ビックリした。従来より『エッセンス』は概論で使ったり、ゼミで使ったりしており、最近では『Do!』をゼミで使い、来年の概論でも使う予定であるし、また以前山田真茂留先生を通じてコメントをいただいたことがあったので、献本したわけなのだが、コメントだけでなく本までいただき恐縮してしまった。ありがとうございました。『エッセンス』は、太田省一さんが「コンパクトだがコクがある」とすすめてくださったこともあり使い始めた本だ。私以外にも、ゼミのテキストにしていた先生がいる。理論的志向の精髄を、体系的に、コンパクトに、しかし深みのある筆致で書いた書物であり、芳醇な味わいがある。その『エッセンス』が、早々と改訂された。ユーザーとしてはうれしい話である。

友枝敏雄・竹沢尚一郎・正村俊之・坂本佳鶴惠/著『社会学のエッセンス――世の中のしくみを見ぬく 新版』有斐閣アルマInterest

社会学のエッセンス 新版―世の中のしくみを見ぬく (有斐閣アルマ)

社会学のエッセンス 新版―世の中のしくみを見ぬく (有斐閣アルマ)

私とはいったい誰で,社会はどのように成り立っているのか。他者とかかわるとはどういうことなのか。日常の行為を出発点に,16のキータームで「社会」を読みとき,社会学のおもしろさを提示する,「いちばんわかりやすい」理論社会学の入門テキスト。〈2色刷〉


〈目 次〉
第1部 行為の分析
 第1章 意味と相互主観性
 第2章 アイデンティティ
 第3章 スティグマ
 第4章 正常と異常
 第5章 予言の自己成就
 第6章 社会構築主義
第2部 秩序の解読
 第7章 ジェンダー
 第8章 規範と制度
 第9章 コミュニケーションの自己準拠
 第10章 社会のなかの権力
 第11章 不平等と正義
第3部 社会の構想
 第12章 共同体
 第13章 国家と市民社会
 第14章 移民と国民国家
 第15章 グローバル化と公共圏
 第16章 ユートピアと想像力
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/2007/11/post_60ec.html

 <「いちばんわかりやすい」理論社会学> というのは、形容矛盾というか、一種のオキシモーロンのようにもみえるが、この本は実にわかりやすい。かつ上滑りでなく、適度に引っかかりがあり、そこから深みがみえてくるような読後感がある。概論をやる場合、総論部のテキストとして非常に重宝してきた。各論を『Do!』でやれば、よい講義ができるというのが、今のところの考え方である。
 出版社にもエールを送りたい。改訂としてはかなり早いと言えるのではないか。これからはビジュアルにもこだわり、データを差し替え、事例を差し替え、記述をより現代化し、いろいろしていかないと、学生はみてくれないことになるだろうから。実は、紙媒体にこだわる必要もないのではないかとすら思っている。会員制の電子ラーニングサイトみたいなところから、テキスト提示して、総務省統計局などへの直リン、ビジュアル資料、場合によっては動画へのリンク、ウィキペディア形式の増殖部分、各種ブックマーク、各種索引などが完備していれば、どんなにいいだろうとは思う。