『入門グローバル化時代の新しい社会学』

 いやあ寒さが禿げに凍みる時代になりましたね。まあ私は寒さには強いのですが、脳血管は正直なので帽子を購入しました。寒風に脳血管が収縮しすぎると、急に暖まったりするとやばい場合もあるわけです。だから、風呂にはいるときも、頭にかけ湯をして、十分脳血管をひらいてから入浴することで、脳卒中はある程度防げるということで、風呂にはいるときもまず頭から洗うわけです。頭を十分に洗った上で、浴槽につかる。寒いと飛び込みたくなりますが、それはよくないらしいです。露天風呂で酒を飲むのも、若いうちだけみたいなところはあるでしょう。
 予想はしていたのですが、今週は卒論の仕上げの添削が入り、また書類作成もあり、他の仕事が手に付きませんでした。たまっている郵便物をみたら、井腰圭介さんから本が届いていました。

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目次

1 現代社会論・入門
グローバル化と国家をめぐる問い
家族と生活をめぐる問題
現代社会の新しい課題
アジアと世界の現在)
2 社会学理論を/で考える
社会学の基礎理論
社会学の基本学説
社会学の新領域

 入門書の場合、読み物的な部分と、問題意識を専門化するための争点の提示、専門化という変換を行う用語や学史的な見通しをつくる部分との折りあいをどうつけるか、どのような案配でそれを配置するかが、大きな課題になることは、他の教科書や入門書が行っている工夫や、苦労、苦汁の選択などをみても、ひしひしとわかることであります。一昔前ならば、入門的な読み物などは参考文献を読めと一言言えばすんだのですが、最近はすべて授業で教えなければ満足できないお客様が増え、かつテキストにもそれが求められるということで、苦労は深まるわけです。最大公約数的な部分をタイトに示せばよかった時代の教科書のほうが、大人の鑑賞に堪えるものは多かったと思いますが、名著といわれるような本、たとえば姫岡本などにしても、今日的には初心者のハートをわしづかみというわけにはいかないでしょう。
 で、この本は、惜しげもなく多くの分量を入門編に用いて、コクのある読み物を並べ、グローバル化という鍵語で社会学的思考をすすめるためのフォーマットを行っています。このフォーマットをどうするかは、授業の鍵になる部分ですが、とりあえず教科書の生命力の分くらいはもつようなものをしなくてはいけないわけです。その点グローバル化という鍵語は適切であると考えます。
 そのあと、社会学的変換をおこなうための用語系と、社会学的変換の歴史的布置連関を示すことで、簡潔な見取り図が示され、最後に今日争点となっている分野について、他者、物語、感情、身体、記憶、道徳、時間、空間、情報、文化、生命という社会学の新領域として記述が行われ、社会学的思考の枠組をつくり出すための手がかりが完遂するという仕掛けになっています。
 執筆者の妥協しないこだわりが込められていると同時に、4ページ立ての規格化された論考がならんでおり、ペラペラとザッピングもしやすいという、若い人への配慮もなされた一品です。一つだけ不満を言えば、人名索引だけではなく、事項索引もつけてほしかったということでしょうか。テキスト持ち込みの試験をする場合、それじゃあ困るということもあるのかとは思います。営業的にはその方が、試験前には売れるとは思うのですが。w。
 井腰さんも、玉稿を寄せられています。女子大での充実した講義は学生たちの評判も高く、ご挨拶にいった折学生たちが質問していて、なかなかご挨拶できませんでした。また、大学院の調査の講義プリントはすぐれたもので、教員も院生にコピーさせてもらったりして、勉強させてもらったりしているくらいです。これは、私だけではなく、社会学科のドンな人たちも参考にしているんですよね。『ソシオロジカル・スタディーズ』もそうですが、工夫した教科書がいろいろ出ていることはよいことだと考えます。