大学に行ったら三浦展氏より、本が届いていた。いつも送っていただきすみませんです。下流社会論に一目も二目もおくのは、旧知ということもあるわけだが、消費の倫理学、欲望の倫理学という視点から、日本の社会構造への洞察をめぐらしているからである。自らが推進してきた「おいしい生活」、パルコ的なものをしっかりと背負って、そこに生真面目におとしまえをつけようとしているように思う。我慢しろと言う議論ではなく、「おいしいもの」をコンシェルジュするという議論を提起し続けている。パルコから資金を得て仕事をしていた社会学者と近い位置にいるのは、当然のこととも言える。太い論脈に逢着したわけだから、調査方法その他でいろいろな批判を受けるとは思うが、行く道行って、量産し、この切り口を育てて欲しいと思う。
目次
第1章 すがりたい男たち
第2章 SPA!男とSMART男
第3章 上流なニート、下流な正社員
第4章 下流の自分探しを仕組んだビジネス
第5章 心が弱い男たち
第6章 危うい「下流ナショナリズム」
第7章 踊る下流女の高笑い――女30歳の勝ちパターンはどれか?
おわりに――あたらしい正社員像を描くべき時代
今回の著作は、帯にまずビックリした。「女性と国家にすがりたい!」。そうか、なるほどという感じですよね。そして、第1章がザックリ「すがりたい」。たぶんぼくたちなら、「すがりたい若者たち」みたいなコピーでひと山あてちゃったりして、みたいに思うんだろうが、そこをグッとこらえて、第2章。うーん。そう来ましたかとしばし感心。まあ、「すがりたい」系のコピーと心中する必要もないということかもしれないし、一つあたったら、それで押すのが定跡だろうし、光文社にはその権利もあるだろう。
ひねりのきいたコピーや、尖ったコピーなどが、ならんでいるけれども、マーケティングという本線をくずさず、ハンディな資料として使えるようにもなっている。その辺は、ミニマムゲインが明確で、安定性も抜群だと感心する。
ある若い人が、「三浦屋って、三浦さんの経営ですか」とオーボケかまして、しばらく笑いが止まらなかった。商売しないで、研究して本を出し続けて欲しいです。私としては。あともう一つ、ちょっと悪趣味な冗談を言えば、どこかの雑誌で、やすおとあつしのベロハス対談とかやってくれねぇかな。