連休真ん中に授業日が二日続いた。むかしなら、休講にしないのかと、しつこく学生にせがまれたりしたものである。気の弱いまじめな先生は、「学生にせがまれてやむにやまれず」と実直に理由を書き、休講届けを出したりした。なぜそんなことを知っているかというと、うちの大学はまじめな大学ではあるが、そういうエピソードをユーモラスに教授会で報告するような面白いところもあるのである。今は、授業料も高いし、また休講も厳しくなっているので、そういうことはまず考えられない。で、大学に来たら、三浦展氏よりまたまた新著が送られていた。
- 作者: 上野千鶴子,三浦展
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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マーケティングを生業にしていたかもしれない社会学者=上野千鶴子と社会学を生業にしていたかもしれないイメージ・マーケティングのパイオニア=三浦展の対談という趣向であるわけだが、組み合わせだけみても思わず手に取ってみたくなる一冊だと思う。上野千鶴子が、『アクロス』や三浦展に、早くから注目していたというのは、外交辞令などではなく、事実である。三浦氏が、まだ若い頃ごく少数の会員限定で公開していた個人誌があり、それが仕事の苗床のようになっていたわけだが、上野氏は、この個人誌を『思想の科学』によせた文章でとりあげ、「発行部数はわずかだが、影響力は大きい」という趣旨のことをのべていたからである。
三浦展の消費の倫理学に上野千鶴子がどのように斬り込んでいるかは興味津々だったし、バトルモードだったら萌え萌えぢゃんかとか思いながらめくったのだけれども、斬り合うというよりは、話がふっくらとふくらんでいったいる感じがした。三浦氏の仕事については、同業者のなかではよくわかっているつもりでいたのだが、そうでもないことに気づいた。なんというか・・・三浦氏の仕事を社会学者にもわかりやすく解説してもらっているという感じがした。あとがきで、上野氏が「社会学的想像力」ということばをくりかえされているのが印象的だった。
私は、個人史ネタが好きなので、第3部はめちゃめちゃ面白かった。三浦氏の大学時代のことなども語られている。私と三浦氏が音信不通だった卒業から『超大衆の時代』までの時代のことなどもわかって非常に面白かった。これにかぶせて、上野氏のバイト時代のことなども語られている。