ゼミのテキスト選びには辟易していた頃がある。社会学的社会心理学の書籍は、いくつか出ていてそれなりにおもしろいのだが、いかんせんバランスが問題だったりしていた。バランスとは、理論と各論のバランス、および理論内部のバランス、そして各論各分野のバランスである。一通り書いてあり、かつ読み応えというかコクのあるものということで渇望をもっていたのだが、『自己と他者の社会学』が出て解決。じゃあ、文化は出ないのかなぁと心待ちにしていたら、佐藤健二,吉見俊哉編『文化の社会学』の出版が昨年の初秋だったか、かなり早く予告された。その後でない。某Nちゃんねるでも、「どうよ?」とか、「誰が書いてないんだ?ゴルァ」「そりゃあこういう場合通常は・・・」などというやりとりがされていた。昨年の後期のテキストにすると学生に宣言したものの出版されず。懲りずに来年度のゼミテキストに上記2冊を指定しておいた。注文も早々と予約してある。思いがけず前者は、出版社からいただいた。で、後者も、そんな感じでいただいた。大学に来たら、届いているのを発見。ありがとうございますです。基本情報である。
- 作者: 佐藤健二
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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内容
いま盛んに論じられている「文化」に対する社会学の「読み」は何か。「文化の社会学」の問題関心とアプローチの仕方を整理するとともに,具体的な事例の切り口から文化を論ずる。文化をまなざす方法の共有をめざす,気鋭の執筆陣による新しいテキスト。
目次
第1部 文化とは何か
第1章 文化へのまなざし=佐藤健二・吉見俊哉
第2章 意味の結び目をほどく/つなぎ直す=佐藤健二・吉見俊哉
第2部 現代文化の諸相
第3章 住居――交渉過程としての住まい=(札幌学院大学)祐成保志
第4章 ファッション――流行の生産と消費=(京都造形芸術大学)成実弘至
第5章 音楽――ポピュラー音楽文化における「洋楽」=(大東文化大学)岡田宏介
第6章 テレビCM――映像文化の歴史的成立=(東京大学)高野光平
第7章 マンガ同人誌――解釈共同体のポリティクス=(東京大学・院)金田淳子
第8章 ネット文化――2ちゃんねるの光と影=(国際大学)澁川修一
第9章 風景――エキゾチック・オキナワの生産と受容=(国際基督教大学)田仲康博
やはり本書の見所は、総論部で、両編者共著のかたちで、がっつり2章書いてあるということは、大きいと思う。萌え・・・と思って買っても、御大は序論で、○○は××クンに任せますたみたいなことを延々と書いてあるだけで、つまらないものも多いからだ。しかし、本書においては、二人の著者の個性がシュタッと打ち出してあるように思う。各論部は、一見「吉見っぽい」し、カルスタでテンパってそれぞれの愛を語るですかなどと思われるむきもあるかもしれないが、かつてあったようなホールしてみますた、ギルロイしてみますた、みたいなのとはそれなりに一線を画しており、かつ長谷正人が学会誌で整理していた「ポストモダンから責任と正義へ」という変容を意識しつつ、「北田以降」を睨んで横溢している野心を味わうのもよし、またそこに「佐健っぽさ」を読みこんでゆくのもよし、なかなかに滋味あふるる著作だと思われました。
後輩で、助手までやったのに自然堂という治療院を開業したのがいるんですが、それと同じ道を歩むと噂に聞いていたかたが、ちょっとした知り合いで、どうなったのかなぁと思っておりましたところ、執筆陣に名を連ね、トラバーユしたわけでもないということがわかり、感慨深いものがございました。
この本もさることながら、有斐閣で新しいテキストシリーズとして、テキストブック[つかむ]というのが出るというチラシが入ってました。まあとりあえず、「つかみはオッケー」みたいなのが、頭をかすめますが、みてみるとポイントを明示したテキストということみたいで、ミクロマクロ経済学と金融論をつかむのが先行発売。社会学は、西沢晃彦、渋谷望著。多人数分担執筆じゃないところは、じっくり読み込めそうで楽しみであります。ちなみに心理学は、同僚が三人書くようです。