Buffy Sainte-Marie

 この前、電車に乗っていたら、となりの外人が英語の小説を読んでいた。のぞき込んでみたらけっこう読める。ところがこの人外はなかなかページをめくらない。おせえよ、おまえネイティブだろと思って、顔を上げると眼があって、奴はニヤッと笑いやがった。ううう。
 フジテレビの深夜にやっている『銀幕会議』は、予告編ばかりで構成されている趣向ものの番組で、毎回興味深くみている。『ホテルルアンダ』をいち早く放送した頃と比べ、第二シリーズになっておちょけらムードが出ているけれども、もしかするとメジャーか?という期待もあるわけで、贅沢は言ってはいられない。今の映画ももちろんよいけれども、昔のものもやって欲しいという期待がある。そこで思い出すのは、『いちご白書』である。可愛らしいピアノのイントロのあと、清冽な、しかししっかりとした意志をもった女性ボーカルがかすかにビブラートしながら滑走する。Buffy Sainte-Marieの「サークルゲーム」は、はじめて夢中になった洋楽だった。
 アメリカの若者の公民権運動やベトナム反戦運動へのアンガージュと、ふつうの若者の不安とふれあいが美化されることなく描き出されている。信仰心に満ちた良識あるアメリカ人がしばしばみせる澄んだ眼のピュアな思いつめた表情とは異なるガラス細工のようなリアリティとそれを踏みにじるものの対比は、今でも生き生きと目に浮かぶ。本の草稿が一通りそろったので、休息して音楽検索をした。真っ先に調べたのがBuffy Sainte-Marieである。「サークルゲーム」は、Buffy Sainte-Marieの曲かと思っていたのだが、ジョニー・ミッチェルの曲のようだ。日本版のベストには入っていないので、アマゾンで輸入盤を買った。これには私の好きなStarwalkerが入っていないので、これはダウンロード購入した。

Best of 1

Best of 1

1. Soulful Shade of Blue
2. Summer Boy
3. Universal Soldier
4. Better to Find Out for Yourself
5. Codine
6. He's a Keeper of the Fire
7. Take My Hand for a While
8. Ground Hog
9. Circle Game
10. My Country 'Tis of Thy People You're Dying
11. Many a Mile
12. Until It's Time for You to Go
13. Rolling Log Blues
14. God Is Alive, Magic Is Afoot
15. Guess Who I Saw in Paris
16. Piney Wood Hills
17. Now That the Buffalo's Gone
18. Cripple Creek
19. I'm Gonna Be a Country Girl Again
20. Vampire
21. Little Wheel Spin and Spin
22. Winter Boy
23. Pescadores
24. Sometimes When I Get to Thinkin'

 Buffy Sainte-Marie の歌は、強烈なビブラートに特徴があるだろう。ビブラートというのではないのかもしれない。Starwalkerを聴いてみればわかるのだが、これはアメリカ原住民の歌唱法、歌のかたちをフォーキーに表現したものではないかと思われるのである。西部劇などに出てくる「ホホホホホ」というようなかけ声も入っている。他にもそのような曲は多い。Buffy Sainte-Marie は、アメリカ原住民の問題を描いた『ソルジャー・ブルー』のサントラでも有名だ。Universal Soldier は反戦歌として知られ、さまざまな社会活動をした人としても知られている。公式サイトができている。
http://www.creative-native.com/
 これによれば、Buffy Sainte-Marieはカナダの生まれで、学生時代から歌を歌い始めた。Fine Art の分野でマサチューセッツ大学から博士号を得ている。他にも、東洋哲学や教育の分野で学位をもっている。歌手の他、Barbra Streisand, Elvis Presley, Chet Atkins, Janis Joplin, Roberta Flack, Neil Diamond, Tracy Chapman and The Boston Pops Orchestraなどに楽曲を提供するなど多彩な活動を続けていたが、「噂の男」リンドン・ジョンソンの時代になって要注意人物のブラックリストにのり、忽然と姿を消した。その後は、アメリカ原住民のコミュニティなどでは著名な存在であり続け、そしてアートの分野などで活躍し、また大学で教鞭をとるなど、活躍を続けているようだ。作品は、the Glenbow Museum (Calgary), the Emily Carr Gallery (Vancouver), the Mackenzie Gallery (Regina), the Institute for American Indian Art Museum (Santa Fe), The Isaacs Gallery (Toronto), Ramscale Gallery (New York), and the G.O.C.A.I.A. Gallery, (Tucson).などに展示されているという。作品の一部は、上記サイトからみることができる。
 トム・ヘイドゥンほか、この時代について書いた本がたくさん出ている。サブカルチャー的な観点から、史料を収集して論じるという構想がむくむくとわいたりするのだけれども、英語力から言って無理に決まっているとため息をつく。英文学の先生たちの会話を聞いていて震えが来たし。「○○の大学院はトフル600で試験免除らしい」「そりゃあ易しいね。甘すぎないか」。英検一級もたいしたことないみたいな人たちがそういう研究をするんだろう。