畠山大・熊本博之編『沖縄の脱軍事化と地域的主体性』

 もっともそのころは、Kさんの周辺の学生、うちのゼミから駒場や早稲田の院に進んだ学生、あと外部の学生たちなども参加して、英書の購読会などをしていた。最盛期は週に〜3回やっていた。岡大時代のように学生とメシ喰ったりしながら、ゴリゴリに勉強できるようになったというのは、実に幸福なことだったように思う。その辺の人たちが集まったのが土曜日の飲み会だった。一人が某県の採用試験に合格し、福祉関連の現場で働くことになったからだ。そこで熊本氏にもらったのがこの本である。九州で銀行につとめていた熊本氏から、九州弁丸出しの電話がかかってきたことははっきりと記憶している。数週間後研究室に現れた時は、スーツをバリッと着て、標準語だった。院生と言えば、よくてユニクロな風体な時代に、てきぱきと事務的な話題をこなす姿を見て、この人は地道に大成できる人だよなぁと思った。その熊本氏が、編著を出した。

沖縄の脱軍事化と地域的主体性 復帰後世代の「沖縄」

沖縄の脱軍事化と地域的主体性 復帰後世代の「沖縄」

第1章 意思表現の自由に向けて
    ――辺野古における不正義の描出とケイパビリティの実現
第2章 安全保障の当事者としての地方自治の可能性
    ――「脱軍事化」に向けた沖縄の道州制論議の文脈から
第3章 自治と司法の地域的自律
――地域自ら決定したルールを治めるためには
第4章 基地のない未来を目指して
――地域の特性を生かした街づくりと自立
第5章 コミュニティ形成の契機としての「沖縄」
第6章 沖縄経済論の脱軍事化と地域的主体性

 今では、地域社会学会、環境社会学会という、社会学の王道で仕事をされている。その熊本氏から本は手渡しでいただいた。 今は早稲田大学琉球・沖縄研究所客員研究員という肩書きである。一緒にダニエル・ベルらの現代社会論の論文や、クランダーマンスらの資源動員論系列の社会運動論の論文を英語で読んだころがなつかしい。当時は英語の本を輪読したいというだけで私はやっていたが、振り返ってみると、いろいろにそこから学んだことを実感している。沖縄に長期滞在するなど地道な調査を重ね、また流行用語のあてはめに終始することもなく、内在的に地域社会を研究していることは、今後が大いに期待されるところだと思う。法学部で行政法を学び、銀行業務にも携わったという経験も、そのうちじんわり生きてくるだろうし、楽しみなものがある。ウェッブサイトも公開されている。

研究プロジェクトのサイト

http://gunsyuku.seesaa.net/

熊本氏ウェッブサイト

http://www.hi-ho.ne.jp/hirokuma/