『質的調査ハンドブック3』『外国人の子どもの不就学』

 土曜日は父母会でした。講堂で全体会のあと、個別面談。全体会では、教育の現状などが説明されました。「仕事で使える英語力の育成」をめざしたGP、それによってつくられた英語教育のスペース、そこでの設備、教育内容などについて紹介されたほか、ケンブリッジ大学との提携を申し込まれたことや、それをうけて夏期に教養講座が設けられ、単なる語学留学ではなく授業も行われることなどが告知されました。うちの大学もかなり本腰を入れて改革をはじめたことが伝わってきて、教育職員の一人としてよい刺激となりました。こうした説明のあと、学生たちのサークル活動の報告として、パフォーマンスが行われました。昨年はハンドベルとバレーでしたが、今年は競技ダンスと英語サークルと合気道でした。なかなか楽しかったし、活躍ぶりを知ることができてよかったです。そのあと吉祥寺のまりやで八期生の同窓会でした。10名参加。2年間の社会人生活を経た一同はなかなかたくましいものがありました。
 夕方父母会のあと家でうだうだしていたら、テレビでBLOOD+というアニメをやっていて、そのオープニングの音楽にしばし聴き入りました。日本語をリエゾンっぽくして、また切れ目を破調にし、歌詞の流れを音として表現する手法は、ラブサイケデリコ他いろいろみられるのを、これは高速でやっていて、歌詞の意味を破壊するみたいな感じで、スリリングでものすごくかっこよく、なにかと思ったら、ジンというグループの『雷音』というシングルでした。ジャケがライオンなのには大笑い。ググりましたら、ダウンロードできるみたいなのでさっそくダウンロード購入しました。

雷音

雷音

 岡山から帰り忙しかったのですが、ようやく小包なども開け始めて、伊藤勇氏、徳川直人氏、山尾貴則氏からいただいた質的調査法の本や、佐久間孝正氏からいただいた異文化教育の本などをぺらぺらとめくりました。前者は、デンジンらの論考を編訳されたもので、アメリカのデンジン他のところで海外研究を行った伊藤さんをはじめ、さまざまな方たちの努力が結晶したものです。伊藤さんは相互作用論の観点からの調査論の論考を発表されていたわけですが、この訳業によりさらにご研究は展開されたことになります。三巻本の重要な論集は、多くの人によって活用されていくはずです。ハンドブックとは言うものの、「詩学」という語彙をふくむ論考があったりするのは、この書物の特徴となっているように私には思われます。

質的研究ハンドブック3巻: 質的研究資料の収集と解釈

質的研究ハンドブック3巻: 質的研究資料の収集と解釈

● 目次

質的研究の学問と実践
第1部 経験的資料の収集・分析法(インタビュー:構造化された質問から交渉結果としてのテクストへ 観察を再考する:方法から文脈へ 文書の解釈と物質文化 映像的方法を再び構想する:ガリレオからニューロマンサーへ 自己エスノグラフィー・個人的語り・再帰性:研究対象としての研究者 ほか)
第2部 解釈・評価・表象の技法と実践(相対主義時代における規準の問題 解釈の実践とポリティクス 書く:ひとつの探究方法 人類学的詩学 評価による社会的プログラムの理解 ほか)
(「BOOK」データベースより)

 佐久間先生は少し前まで同僚だったわけですが、転出後もう四年になると知り、時の流れを感じています。同僚というよりはいろいろ教えを受けた先生の一人と言った方が適切かもしれません。佐久間先生というと、私にはウェーバーの重厚な論考が真っ先に思い浮かびます。物象化論、合理化論の観点からウェーバーを読解した諸々の論考のなかで、佐久間先生の著作は、ウェーバーの『経済と社会』『プロ倫』を整合的体系的に解釈し、さらにそこから比較社会学の視座を論定している点で学ぶところが大きく、授業で社会学史を講義する場合常に参照、言及してきました。
 一般には、教育社会学、国際社会学といった領域のご研究のほうが知られているのかもしれません。イギリスの社会教育の研究はつとに有名ですが、今回の著作は女子大で講義されていたグローバリゼーションの問題などについて、一方で比較社会学的な視点を用いながら、他方でしょうがい者問題など人間共生の多様な問題に配意しながら、じっくり論を展開しており、OGのかたたちは是非とも手にとって観るべきものではないかと思われました。

外国人の子どもの不就学

外国人の子どもの不就学

内容:

増加する外国人児童・生徒の不就学問題について、いかにかれらが日本の教育から構造的に排除され、また地域間格差が発生しているのかを自治体の教育施策・制度との関係で論じる。

目次:

序章 近年の外国人の動向と試行錯誤の教育界
1章 進行する学校の「多文化」化―多様な教育機関に進出し始めた外国人の子どもたち
2章 深刻化する外国人の子どもの不就学
3章 ニューカマーはオールドカマーの道をたどるのか
4章 公平性欠く外国人児童・生徒の自治体行政
5章 教育システムの改革に向けて―オールドカマーとニューカマーへの対応をめぐって
6章 しょうがい者教育と外国人教育
7章 グローバリゼーション時代の教育と市民権

 また、佐久間先生の著作は非常にわかりやすい文章で書かれています。さまざまなご著作を拝読することで、しっかりしたわかりやすい文章の書き方のようなものを学んだように思います。論点整理した、脈絡がはっきりした文章を書くなどというと月並みですが、わかりやすい著作を手にとって読むことで、文章を書く上で学ぶことは大きいと思います。『ウエーバーと比較社会学』などは、難解な理論的な内容を論じた本ですが、非常にすっきりしていてわかりやすいものです。いうまでもないことですが、わかりやすいからと言って、書物のもつすべての論点、含蓄を理解したとは、私にはとても言えないわけですが。