三浦展『脱ファスト風土宣言』

 末尾に書いた都合もありw、1日ずらしますた。「オザ君」ことスピードワゴン小沢と小野真弓のケコーンにまつわるトホホについては、昨日のエントリということで記しました。−−
 家に帰ったら洋泉社のW氏より三浦展編の『脱ファスト風土宣言〜商店街を救え!』(洋泉社新書)が届いていた。都市計画論や建築学の専門家とのコラボである。一方で「仕事をしなければ自分が見つからない」という議論、他方でそれを生産労働ではなく消費の倫理として問題にする議論。二つの議論をすりあわせる三浦氏独特の立論が、本書でも踏襲されている。商品の開発販売につながるような議論と、モラリスト的な視点が併存していることは、若い頃議論したいろいろなことを思いだし、なかなかの興趣である。洋泉社の新書yでは、『大人のための東京散歩案内』と『ファスト風土化する日本』の2冊を出している。郊外化、超大衆、WASP(ホワイトカラー・アメリカナイズド・サバーバン・プライベーツ)などの鍵語で、80年代の消費生活をリードしたあと、三浦展氏は、「ロハスなもの」などなどを様々に展開する試みを続けている。今回は、序章と対談で全体の方向性を示し、論者たちが論じるかたち。従来からネット上などでは一部発表してきた「地方の個性」という論点について論じた本になっている。

脱ファスト風土宣言―商店街を救え! (新書y)

脱ファスト風土宣言―商店街を救え! (新書y)

三浦展編『脱ファスト風土宣言〜〜商店街を救え!』洋泉社新書y

目次

序章「街育」のすすめ
 ファスト風土以外の環境に住むことは、われわれの基本的権利だ 三浦展
第1章 日本の商店街は世界のお手本
 中心が位置の守り方 服部圭郎
第2章 真の田園都市を目指して
 神戸、舞多聞みついけプロジェクト 青木崇人
第3章 「人が集まる街」をいかにつくるか
 プレイスメイキングという思想 渡和由
第4章 子どもがよく育つ街
 街が子どもに与える影響から 仙田満
第5章 都市の中で自然と住む
 「便利な生活」から「便利で豊かな生活」へ 甲斐徹郎
第6章 東京都心、空きビル再生の計画と実践
 マイ・ロスト・シティと都市再生のストーリー 馬場正尊
第7章 地方都市の潜在力を引き出す
 蔵プロジェクト 竹内昌義
第8章 風土がつくる建築
 場所の固有性を復活させる 隈研吾
第9章 ファスト風土外にこそ多様な世界がある
 【対談】オギュスタン・ベルク×三浦展

本のカバーより

 自然・農村・都市・旧郊外の破壊、地域文化の喪失、環境・エネルギーへの負荷、流動化と匿名化による犯罪の増加、退寮浪費空間の出現による現実感覚の変容、大量消費による意欲の低下、生活空間の閉鎖化による子どもの発達の阻害、アイデンティティ危機から生まれるナショナリズム・・・ファスト風土化がもたらすこれらの問題から地域を守るためにはどうすればよいのか?中心市街地の衰退を阻止する方法から、人が集まる街づくりや建物・場所の潜在力を引き出す街づくりの試み、子どもが遊び育つ街や真の田園都市の姿、そして風土と建築の関係までを、社会学・都市計画論・建築学などの論客10人があきらかにする。

 若干言い添える。ただし殴り書き。これはわかる人にわかればいいし。格差社会化、下流社会化=ファスト風土化というものを自律性の問題として論じるときに、一見消費の差別化のような議論が頭をかすめるし、自律性根拠を社会の仕切りとするならば、個性化=誇りある階級階層消費ということだと、「貧乏人は誇り高く麦を食え」という議論なのかというようなこともいろいろ考えたくなるということは、まあ理の当然であるわけだけど、外的(社会的)構造化/非構造化の議論はとりあえずカッコで括り、内的(人格的)構造の確立=消費の倫理学という方向性を出しているのだろうと、10年ほど前村上泰亮の著作についてあれこれ話したことなどを思い出しながら思っていたのである。今回の著作はカッコで括っていた社会構造のうち地域の格差について論じはじめたわけで、その点は興味深かった。さらに踏み込んで社会構造の問題についてどう論じるかは興味あるんだけど、たぶんそれも消費の二極化について気の利いた議論を展開するみたいなかたちで、解決してしまいそうな予感はある。
 本をいただいたW氏は、イイのを書いたら新書出してあげてもいいよみたいなカンジだし、お茶漬け食べていきませんかという類かもしれないけど、でもでもちょっとヨイショということで、このエントリーを1日前にずらしました。せつねーーー。w