柴田哲孝著『下山事件 最後の証言』

 友だちにものすげぇ面白い本があると勧められた。新聞各紙話題騒然なのだという。そいつには、『オデッサファイル』ほかフォーサイスは面白いとかゆってすすめたことが前にあり、あの手のものが好きなら絶対面白いはずだというので、本屋に見に行った。もうでてからか成り立つ本だが、平積みになっていた。手に取ったら、分厚いのでかなり萎えた。こりゃいかん、読めないと思った。厚い本は嫌いなのだ。昔、岩波文庫の☆ひとつばかりよんでいたことがあるくらいだ。ぺらぺらとめくる。気がついたら、20分くらいたっていた。馬路やべぇ。こりゃあ買わなくちゃと思い、忙しいにもかかわらず、朝方までかかって全部読んだ。こんな厚い本をこんな一気に読んだのは、東電OL事件のルポ以来だろうか。あのときは、早稲田の研究会に行く道すがら買って、帰りに馬場駅前の喫茶店で一気に読んだような記憶がある。

下山事件―最後の証言

下山事件―最後の証言

出版社 / 著者からの内容紹介

私の祖父は実行犯なのか?戦後史最大の謎。半世紀を超えてついに核心に迫る親族の生々しい証言。「約束しろ。おれが死ぬまで書くな!」。祖父の盟友にして某特務機関の総師は言った。真相を知る祖父の弟、妹、そして彼も没した今、私は当事者から取材したすべてを語ろう。「あの事件をやったのはね、もしかしたら、兄さんかもしれない・・・・」祖父のニ三回忌の席で、大叔母が呟いた一言がすべての発端だった。昭和ニ四年(一九四九)七月五日、初代国鉄総裁の下山定則三越本店で失踪。翌六日未明、足立区五反野常磐線上で轢死体(れきしたい)となって発見された。戦後史最大のミステリー「下山事件」である。陸軍の特務機関員だった祖父は、戦中戦後、「亜細亜産業」に在籍していた。かねてからGHQのキャノン機関との関係が噂されていた謎の組織である。祖父は何者だったのか。そして亜細亜産業とは。親族、さらに組織の総師へのインタビューを通し、初めて明らかになる事件の真相!

 「兄さんかもしれない・・・」。ママ・どぅゆりめんば♪という、ジョー山中のシャウトを思い出す。おい、ハルキじゃんみたいな。w ある意味、事件を読み解く筆致は、ミステリーのようでもある。またある意味、古田武彦ばりのねばり強い「証明」を書きつけているようでもある。ある意味、親族としての存在証明のようでもあり、またある意味戦後史、日米関係史を裏面から描いた本のようでもある。政治家秘書などが、引退後に書いた決意と信念の書のようでもある。戦後史の主要な人物の名前、戦中、戦後の馬路やべー逸話その他がこれでもかとばかりにちりばめられており、また総帥は日本刀をヒュッと顔に突き付け、んでもって著者はビビリつつも「イイ刀ですね」とかゆったみたいな描写など、一見嘘くさいくらいなのだが、読んでゆくとすべてがひとつの糸でつながってゆくようなそんなカンジ。他に、ところどころクサイ表現なども目につくのだが、そんな893な美学など色あせるような事実がたたみかけられる。癌に冒されてなおなにかをもとめる先輩ジャーナリスト、戦争のオトシマエをそれぞれにつけて死んでいった人々の姿が荘厳な残像となって浮かび上がる。だからこそ、これでもかとダメを押した終章は、アマゾンのレビューでも批判されているし、その理屈はもっともだと思うが、あえて書いた著者を私は尊敬したい。プロジェクトX中島みゆきのヘッドライトテールライトがあってこそだとか、皮肉なことを言うつもりはさらさらないのだが。どこかでみた名前だと思ったら、ライスシャワーの話を著作にまとめた人だった。小泉劇場村上ファンドホリエモン下流社会、日米中米日中関係、好景気と下流社会格差社会外資歌舞伎まくり。左官職人だった祖父が、新聞に載った吉田茂国葬記事を食い入るように読んでいたのを思い出す。っつーのは、ウソだぴょ〜ん。w