『リアル』第五巻

 車いすバスケットをものすげーかっこよく描いたマンガ。スラムダンク作家のあれやこれやの顛末(オトシマエ)。ちばあきおの『プレイボール』すらぶっとぶようなゆったりした展開。五臓六腑から絞り出すようなシャウト。「ディバイド」の描き方などちょっと図式的という声もあるけど、いろんな理屈を理解した上で、フラットでべたな感動とは別の分厚い表現がここにはあると思う。能条純一『哭きの竜』と妙に似た、でもちょっとちがう、あっちっちなパトスがたぎっていて、かつ、表現法も北野武の映画みたいな、奔放な組み替えが行われ、なかなか読みごたえがある。自分が学問的にやろうとしていたことのすべては、このマンガと、西原理恵子の諸作品で描き出されてしまっているような気もして、複雑な気持ちだ。サイバラ作品とこれがあればもう他にはなにもいらないと言っても言いすぎではないくらいなのだ。そして、そういう時間的な前後にずれるコマ割り、絞り出すシャウト・・・などの理屈を超えて、絵が実に(・∀・)イイ!!のであって、すごいもんだと思う。しかし、スラムダンクもこれもバカみたいに売れてるのね。

リアル 5 (ヤングジャンプコミックス)

リアル 5 (ヤングジャンプコミックス)

 キングコングの実写久々にやってるけど、どんな特撮になっているのか、見てみたい気がしないこともない。今はカルトな映画館になってしまっている横浜の光音座がまだOPチェーン専門館ですらなく二番館クラスのなかなかの映画館であったころ、そこに近所のガキ連で『キングコング対ゴジラ』を見に行ったのを思い出す。『モスラ』において、ザ・ピーナツがモスラ〜や♪モスラ〜♪と唄っていたのはあまりに有名だけど、『キングコング対ゴジラ』も妙な土俗ソングが出てきて、キングコングゴジラキンゴコングゴジラ、嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼キングコング♪みたいに唄われていて、あほらしいカンジもするけど、耳に残って、けっこうがきたちが唄っていたものだ。そんなものをぶっ飛ばしてしまったのが、アニメ版キングコングで、家族とキングコングの交流を描くという腕白フリッパーばりのぬるい作品になってしまったりしていたけど、「ウッホウホウホウッホッホ♪」とはじまる主題歌は、非常に人口に膾炙し、大学のコンパなどでもみんなでウッホしながらうたったものである。「ウッホウホウホウッホッホウッホウホウホウッホッホ頭を雲の上に出しキングコングがやってくる怖くなんかないんだよキングコングはともだちさ嵐も地震も怪獣もキングコングニャかなわない戦えキングコング世界の王者」と、ありえねぇくらいドキュソ誇張しまくりな歌詞だけどいまだにこうやって打ち込めるんだから、どれだけうたったかってことだ。しかし、頭を雲の上だとか、嵐や地震もかなわなくて、怪獣のキングコングはどんな怪獣にも勝つと言うのは、笑えないこともない。