家に帰ったら野村一夫氏から『未熟者の天下』が届いていた。「今どきの若い者」を見下し、叱りつける本がいろいろでて、それぞれの意匠を競い、新奇な論壇での立ち位置を模索しながら、デフォルメをきかせて論じているなかで、「大人になること」「未熟なこと」の基本的な知見をわかりやすく丁寧に親切に語っている。いろいろなことの基本が、大人と未熟という鍵語のもとに語られている。論壇的新奇さを求める人が読むと、いろいろな意見が出るのかもしれないが、私の教えている学生たちが読んだら、エッジのたったどうだと言わんばかりの本よりも、この本の丁寧さに惹かれるのではないかと思う。私はこの著者の『社会学の作法−−初級編』という本をかなり気に入っていて、とても重宝しているし、それがソキウスというウェブサイトの魅力にもつながっているし、そしてその延長線上に理解すれば、この本の作品性というものも見えてくるように思った。
いろいろ説明しようとして、情報密度が濃すぎるというか、端的に言えば「詰めこみすぎ」なことが若干気にならないではなかった。まあしかし、それは人のことは言えない。舌足らずに痙攣したどうしようもなくスティグマな私の語りと比べれば、おだやかに優しく丁寧にかたる野村さんは、きっと学生たちから信頼されていると思う。そして、三浦展氏の諸著作とはまた違うかたちで、「大人の消費」というところに照準されていることは、やはり重要で、この問題を毒づかずに説く人は今日かなり貴重なのではないかということだけは確かだろう。
未熟者の天下―大人はどこに消えた? (青春新書インテリジェンス)
- 作者: 野村一夫
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 新書
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