ホーキング青山『お笑い!バリアフリー・セックス』

 文庫化されてしまった。しかも、ちくま文庫から。デブとの対話が一番印象に残っている。とりあえず笑おうぜみたいなことからはじまっているところは、デブにおける私のスタンスと通じあうものがある。こいつが芸人でいて、歌舞伎まくっているのは、奇跡のような芸ならではと思う。大槻ケンジの解説文が欲しくて、迷っていて、携帯で写真撮ってすませようかなどとも思っていたけど、結局文庫も買ってしまった。

紀伊国屋サイトの紹介

史上初、車イスで暴走する、身障者芸人・ホーキング青山。ついに、自分自身の下半身をお笑いネタにしてしまった。コンプレックス、性欲、差別といった、人間の心の奥のほうにあるやっかいなモノを探り出しては、爆笑の弾丸をぶち込む!養護学校での思春期、車イスでの初体験、健常者とのセックス…。でも、けっきょく、こればかりは皆おなじ!?究極の人生論。

目次

第1章 ホーキング・セックスライフ(お笑い誕生;セックスライフの原点は両親にあり!;ナンパはいつも「身障とヤれる機会なんか、なかなかないよ」 ほか)
第2章 ホーキング・ハードコア(公衆の面前でオナニーができる奴;天国と地獄の「究極オナニー」;オレのSMクラブ体験記 ほか)
第3章 ホーキング・ナウ(オレは不自由なことはない身障だ;史上初・身障芸人のライブのツボ;オレは乙武に勝ち目はない!?)
AV女性監督特別怪談 「身障者の性」と「AV界の女性監督」は似た者同士!?(小早川かおり×ホーキング青山

著者紹介

ホーキング青山[ホーキングアオヤマ]
1973年、東京都大田区に生まれる。先天性多発性関節拘縮症のため、生まれたときから両手両足が不自由。1994年6月、若手芸人コンテスト『すっとこどっこい』で、史上初の身体障害者のお笑い芸人「ホーキング青山」としてデビュー。以降、ブラックな障害ネタを売りにテレビや雑誌などで活躍するかたわら、日本各地からも講演依頼が殺到し、多忙な毎日を送っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 ビートたけしについても思ったことだけど、この人の言っていることは「ブラック」なんだろうか。だとしたら、この人の芸の価値はそれによって微動だにしないと思うけど、私は「ブラック」とかゆって芸を語ることは馬鹿げていると思う。デブネタ言って、「ブラックですよね」とか理解者ヅラする椰子は、むかつくったらありゃしないからだ。
 この本に共感したとか、なんだかんだにやけたことを言うつもりはない。すべてに賛成できるわけでもなく、てーげーにしとけや若僧といいたくなる部分もかなりある。でも、この椰子の口説き文句は、研究してきた理論的見地とよく響きあう。「身障とヤれる機会なんか、なかなかないよ」。ブラックイズビューティホーでも、アフリカ系アメリカ人でもない、ものの言い方がここにあると思うんだなぁ。田舎の文化、高齢者の文化、障碍者の文化、あるいはデブの文化が、もしかしたら「メイン化」するかも知れねぇぢゃんかと思ってきた私としては、そしてそのような理論的な立論の陳腐さに吐き気がして、なんて貧しいんだと嫌悪感を煮えたぎらせてきた私としては、この口説き文句はけっこう脳天に突き刺さるものがあったんである。