決断力・集中力

 将棋連盟が赤字を出しそうだとかそんな話を2ちゃんで読んだ。みんなでやるゲームがトランプや将棋だけといった時代ではなくなり、また少子化で子どもの数も減って、将棋人口もへっており、『将棋世界』の売れ行きも減っているらしい。私は囲碁や将棋はぜんぜん上手くないけど、下手の横好きというか、昔からけっこう夢中でやってきたし、道場で将棋を楽しむほか、ネットで情報を得たり、棋譜鑑賞したり、本を読んだりして楽しんできた。そこから学ぶことは、直接にはないのかもしれないが、得るものは多いような気がしている。そんななか東京の羽生善治、神戸の谷川浩司という東西の天才棋士が書いた本が、ベストセラーになって注目を浴びている。

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

集中力 (角川oneテーマ21 (C-3))

集中力 (角川oneテーマ21 (C-3))

 谷川の本は五年がかりで10万部、他方羽生の本は2ヶ月あまりで20万部なんだそうだ。谷川は最近勝率的には不調であるが順位戦は三連勝、羽生は名人獲得はならなかったが、あいかわらず勝ちまくっているようだ。私の世代にとっては、谷川の人間くさい部分のある将棋に惹かれるものがあるが、羽生の著作はこの本にかぎらず「物事を単純化して考える」といった思考法を読者に伝えるというコンセプトが明解で、デジタルに分節化された論旨は非常に読みやすい。これまでエッセイや観戦記などで、面白いと思いつつも、充分に展開されなかったことが、まとめて本になっているカンジで、実に面白い。また羽生という人の冷静な合理性は、人間くさい叙情に書けるところはあるのだが、そのぶん説教臭さと無縁で、クールな読み物になっていると思う。私はあくまで思考法の本として読み、そして書き方を授業や原稿に逝かせないかと思って読んでいる。学校教育や社内教育などで一括採用され、レクチャーや、実戦指導が盛んになることは、非常にまっとうな普及であると思う。それにしてもけっこう将棋をしているのに、まったく強くならない。学問といっしょで踏み込みが足りない気がする。