勉強に行き詰ったときとかに精神のリフレッシュをするために新書をよく読んだ。かつては新書の種類も少なく、フォローしやすかったし、また出る新書には毎月のように話題作があって、新刊が出るのが楽しみだった。今は平積みになっているだけでも半端じゃない数があり、暇なときは宝探しな気分でワクワクするけど、疲れも吹っ飛ぶという作業ではなくなっている。祭りで横浜に帰るので車中でめくろうと新書を物色。ジュニア新書にあったこの本を購入した。前に読んだ『英文快読術』がめちゃめちゃ面白かったからだ。
- 作者: 行方昭夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/04/20
- メディア: 新書
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目次
I 英語らしい英語 日本語らしい日本語
Waterは水じゃないの?/英語は「大」から「小」へ/退屈なのは誰のせい?/流行語や新語にとびつくより etc
II この英語はどう訳す?
コンテクストは大事!/イディオムは化合物/まだ辞典に出ていない表現/辞典の訳語はどう使う? etc
III 小さな違いに注目
「思う」のいろいろ/おおげさな言い方/andのいろいろ/ofは「の」だと思い込まないで etc
IV 文全体の姿に気をつけよう
句読点で意味が変わる!/省略されているのは何?/仮定法は仮定だけではない!/挿入構文に慣れよう/翻訳の手作業は続く etc
V さらに意欲のある人のために
名文の徹底理解/さまざまな英語/多読のすすめ
昔の英語雑誌には、英語の勘所、落とし穴、ワンポイント・レッスンなどが、エピソード満載のエッセイみたいにして書かれたものがたくさん載っていて、それがめちゃめちゃ面白かった。そう語る著者は、とっておきの失敗談、「キター!」と叫びたくなるような体験談などを交えながら、一章一つ、英語らしい発想の勘所を説明した上で、核心を一度みたらガツンと来て容易に忘れない英文にして章末にリストアップするという基本構成で提示している。モチーフとなっているのは、『和文英訳の修行』の500の短文で、英語発想のエッセンスが凝縮された英文を暗記することで、英語を読んだり、書いたり、教えたりすることの骨格ができたということであって、このことは『快読術』にも書いてあった著者の基本的な方法論だと思う。『修行』のほうは修行というだけあって、しゃにむな訓練が不可欠なわけだけど、そのような修行の意味をわかりやすく説いた本だということができるかもしれない。
たとえば、「大から小」というのは、「He struck me on the head.」みたいに、「ぼくをぶった」→「あたまを」みたく大雑把にゆって絞込みをかけるという発想があるなどと説明し、『快読術』で「語順どおりみてゆくこと」などとして論じてあったことを感覚的に理解できるように工夫してある。しかも、類例を挙げつつ、最後はラフカディオ・ハーンの文章なども交え、丁寧に説明を行い。章末に四個の英文が掲げられ、さあ覚えろ!ということになるわけだが、これがストンと記憶に定着しやすくなっている。前に「読みほどき」としてブログで論じた「ofの格」の話なども、Ⅲで論じているが、リンカーンのゲチスバーク演説などを例にし、高校時代の先生の理路整然とした説明などを交えながら説明し、発想の勘所が身にしみるような単純な英文を提示しまとめている手腕には驚く。Ⅳで論じている無生物主語の話、仮定法の話、挿入構文などの話題は、かなり高度な論文を読む技術論ともなるものだと思うが、悪魔のように説明が上手いのでぶっ飛ぶ。英英辞典を使えなどという類の本ではなく、英和辞典は重要、英文法も重要と説き、コミュニケーション重視の英語教育に一石を投じるかたちになっているのも、「読めるけど・・・」の世代には痛快なものがある。あてくしは、ろくに読めもしないけど・・・。w
アマゾンのレビューに「例文は全部で57あります。通し番号を付けるくらいのことができないわけはないと思うので、それならタイトルの50っていうのはまやかしっていう気がする。残念!!」とあったのには笑いますた。すげぇ。数えている人がいるんだね。もう一つのレビューは、私といっしょで説明の上手さに感嘆しています。社会学でも誰かが、同じようなものを誰かジュニア新書で書けばいいと思う。もちろん高校生でも読めるように。