-+-SPEED GRAPHER-+-

 暑い。起きて耳鼻科で点鼻薬をもらいブランチ。暑い。仕事がはかどらない。最近録画するようになった『SPEED GRAPHER』をみながら、ボーっとしていたら、『あぶない刑事』がまたまたつくられ、『まだまだあぶない刑事』ということで上映されることになったことを知る。ごぞんじ、まだまだもっこ館ひろしと、でかべやではややひねった芸風みせはじめた柴田恭平の共演。すっかり親ぢになった2人がどんなアクションをするのか。「あの時代」をおくったものには、めくるめく一夜のひと盛りの饗宴の記憶をたぐりよせ、我が身に重ね、さまざまな思いをめぐらせるのではないだろうか。バブルのこぼれにあずかって、ちょっとイイ服を着て、美味しいものを食べ・・・という生活のスタイリッシュな象徴としては、なにもトレンディードラマだけではなく、かっこいいアクションもあったんだなぁとしみじみと思う。浅野温子からなにから、サイキックなひねりは微塵もなく、底抜けにぶっ飛んでいた。そんな記憶のかけらの一片として、デュランデュランの『グラビアの美少女』があり、プロモで定評のあったゴドリー&クレーム作品によってやばい饗宴のデカダンスがウルトラポップに表現されていて、しかもカメラのシャッター音がトラウマのように残響し、とてもかっこいい余韻を堪能することができる。それをモチーフにした作品には、潜在的な期待があったと思うのだが、あざといまでにみごとな作品化をしてみせたのが、『-+-SPEED GRAPHER-+-』であると思われる。

 HPには、年齢層は高くとり、30〜40代の潜在的なアニメファンを掘り起こすと、制作モチーフ意図が明言されている。「だからといって、マニアックなものではなく、高尚な思想や哲学を声高に掲げるのではなく、あくまでエンターテイメントとしての作品作りを目指します」というのもよくわかる。『攻殻機動隊』などは、鬼かっこいいが、むずかしいというか、ちょっと理屈がうるさいという声を、ヲタクでない人々からはよく聞く。こね回す理屈ではなく、映像からダイレクトに伝わってくる感覚的なかっこよさと、若干の浪花節みたいなものがあると、通俗的ながらわかりやすいという気がする。浪花節は偽悪がすぎるよなぁと思っていたら、HPには「アクションとファンタジーと人間ドラマ、現実と非現実、日常と非日常のはざまで織り成す物語」とあり、それを「大人の童話」と括っている。なるほど・・・と得心した。アニメなど語る資格もない私なのであるけれども、親ぢの一人としてなにかゆうのも悪くないんじゃねぇかということで、ちょっとだけ話してみたいと思う。
 状況設定も狙い澄ましたものであるように思う。「バブル戦争から十数年」たった時代設定。「世界は富める者と貧しき者の二極分化が急激に進」んでいるという社会認識。そして「富める者はひたすら己の欲望と快楽を求め、東京はその欲望を満たす快楽都市と化した」という現実を一方で見据えている。

 斜陽の一途をたどる東京の中で、あだ花の様に咲く現代のソドム「六本木」。その中で、その存在をまことしやかに噂される秘密社交場。実は巨大コングロマリット「天王洲グループ」が生み出す第二次バブルの中心地であり、政治、経済、学術、芸能等、各界において日本を牛耳るセレブリティのみが出入りし、互いの秘密を共有している

というファンタジーを対置する。やばいくらいに、計算された設定だと思った。これはやっぱし、パチンコCRエヴァンゲリオンで初号機が「くぉ〜くぉ〜」とジラースもぶっ飛ぶようなもの悲しい声で泣きながら、攻撃目標を引き裂いてゆくようなりあるとも違うし、またその先にある、勝ち組だけが享受できる制御、忍耐、欲望全開のドラマと、こぼれた者の喪失感すら喪失してしまったようなリアルとも違う、もしかしたら、あのときみたいに、こちとらですらちょっとおこぼれにあずかれるかもみたいな期待もありつつ、他方で病気やトラウマなリアルも盛り込まれていて、しみるなぁ〜みたいな。
 必殺技「写殺」こそが、「グラビアの美少女」が主題歌たる所以のものだと思うし、連続するシャッター音というモチーフを象徴するものであると思うのだけれども、なんか北斗の拳みたいじゃないなどと思いつつ、みてみると非常にスタイリッシュで(・∀・)イイ!!と思いますです。昨日のはタイガーマスク仕様?などと思ってしまいますたが、もちろんそれにとどまるものではありませぬ。でもやっぱくりかえしみるのは、出だしの「グラビアの美少女」のところ。一カ所(銃を舐めるところが)アレかなぁと思ったけど、気のせいかもしれない。ちょっとフルクサスっていいますか、トリップ気味の映像マジックは、非常にすばらしいものであると感じますた。これからは、やっぱ団塊の世代がはまりまくるようなものができないとあかんのではないかなどとも思ったりもしたのですが、なつかしさと、かっこよさがいいバランスで、深夜にもかかわらず、録画しているにもかかわらず、みてしまうことも多いのであります。
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