仲川秀樹『メディア文化の街とアイドル』(学陽書房)

 今日もsakusakuをみようと思っていたが、昨日寝たのがたぶん四時くらいなので、一応起きるも、また寝てしまった。起きたら、授業遅刻寸前ですた。メシ喰えないからパンでも食うかと思い、なにげに表示をみたらパンってすげーカロリー高いのね。知らなかった。福山雅治がむかしドラマで「パンが二個でパンツー」とかわけわかめなシャレを言っていたが、たしかに二個で十分なカロリーある。ちょっとでかい甘いパンだと500カロリー以上あるんだからね。信じられない。で、授業をして、昨日仲川秀樹氏から届いていた『メディア文化の街とアイドル−−酒田中町商店街「グリーン・ハウス」「SHIP」から中心市街地活性化へ』(学陽書房)をぺらぺらとめくる。帯には「アイドルは商店街を救うのか!?地域商店街活性化のための一大プロジェクトがもたらした成果とは?現地に入り込み“メディア文化”の視点から社会学的に解明する!」とある。目次と概要は次の通り。写真は、地元の方のブログにアップされていたもの。浪漫亭という文化の場においてあったものだという。商店街の風景などもアップされていて、非常に興味深い。


(出典:http://blog.drecom.jp/shop

序文 メディア文化のある街

第1章 メディア文化の基礎理論

仲川氏のマスメディア論の研究とサブカルチャー論の研究を基礎にして、メディア文化論を定礎している。

第2章 メディア文化の街、その前提

酒田にあった象徴的な「文化のスポット」である映画館「グリーン・ハウス」を回想しながら、シネコンの先駆けとしての意味あいなどを吟味しつつ、コンテクスチュアルに「70年代」を論じ、かつそこから「メディア文化の街」として酒田を位置づける。

第3章 地域商店街を若者が語る

地域商店街について、400人の若者に調査を行った結果をまとめ、地域商店街の魅力、オリジナリティ、街づくりのありかたなどについての若者の見解を総論的に整理している。

第4章 メディア文化の街と商店街発アイドルプロジェクト

田中町商店街発アイドルの「SHIP」のプロジェクトを、いわゆる「地ドル」ブームなどとも関連づけながら、サブカルチャーの視点を駆使しつつ考察し、「地方初メディア文化」について論じる。

第5章 メディア文化の街と商店街アイドルを探る

田中町商店街におけるフィールドワーク、地元高校生や地元商店主の語る酒田の街についての調査結果のまとめ。「プロジェクトSHIP」についての地元の受け止め方などを詳細に論じる。

第6章 商店街発アイドル「SHIP」をめぐる影響と効果

アイドル「SHIP」の首都圏への影響を調査した結果の報告。そこに対する若者の反応、提言などを探っている。

第7章 メディア文化の街の活性化

メディア文化の街の活性化について、総括的に議論を行いつつ、中心市街地活性化についての一般化されたコミットメントを提示している。

むすび メディア文化の街とアイドルのゆくえ

「グリーンハウス」を光源にして、全体を総括する。

 仲川氏と私はほぼ同年齢で、70年代に高校生、大学生だった。「グリーンハウス」という文化の場は、酒田出身の仲川氏にとってどのような存在であったかは、想像に難くない。その喪失体験が出発点となり、60年代の対抗的なサブカルチャーと80年代のポピュラーな消費文化を結ぶ70年代がクリアにされている。喪失というよりは、酒田の場合街ぐるみ大火で焼失したわけであり、グリーンハウスはその火元だった。それを光源にして、詳細な事実が積み上がられていることで、説得的な事実が明らかになっていると思う。他方、「メディア文化の街」という観点を、これまでのご研究から導出され、目次全体にビシッと串が通っていて、読みやすい著作になっている。地元のメディア、商店街などの人々も関わった研究会などを積み重ね、調査を行われた結果が公刊されたことは意義深いことだと思う。いろいろな気配りから、詳細にすぎる記述なども散見されるが、それがそのまま著作のリアリティを鮮明にしている。そして、ゼミ生との共同調査の結果であることが明示され、一人一人の名前が銘記されていることに、敬意をもった。学問的見識や政治的な立場などからではなく、街づくりに切実に悩んでいる人々に対して本書は書かれていると思うし、実際そういう人々に対して示唆に富む知見を提起しているように思う。
 大学院時代足かけ三年かけて、『ミドルタウン』『ミドルタウン・イン・トランジション』を読んだことを思い出した。名詞の単語調べに、大きな英語辞典を何度も引きながら、青息吐息で読んだが、街の様子を重厚に描いた著作は圧倒的な存在感をもって、自分のなかに位置づけられた。理論的な筋道は、後者のほうがすっきりしているが、いささか図式的な社会変動図式の適用というカンジがするというのが、読後の総括となった。前者は、あまりはっきりと変動をめぐる決着をつけてはいない。しかし、事実の積み重ね詳細に街が描き出されている。そのあやや含み、その底にある透徹した視点に、圧倒された。明らかにこちらのほうが著作としては出来がいいと考えた。おそらく、地方メディアなどをはじめとして、注目を集める著作であると思われるが、本書の価値は、リンドの二冊の著作の読後感に照らして評価したい気分である。つまり、「メディア文化論」の成果というよりは、事実の厚み、論述のコクといった観点から評価したいと考える。言うまでもなく、評価というのはおこがましいとは思うのであるけれども。個人的には、「グリーンハウス」を描いた部分にもっとも惹かれたことを付言したい。