試験採点

 実はまだ試験の採点は一枚もしていない。本務校では、小テスト、ノート整理ほか平常点も加味し、かなり詳細につくられたえんま帳があるので、試験一発じゃないわけで、ざーっと実力点検という意味が濃いこともある。しかし、本務校は、四年生は2月早々の〆切であるものの、それ以外は2月後半が〆切である。他校と比較して、非常に時間を長くとってあると思う。それだけしっかり答案を読めということなのである。そのかわり答案を番号順に整理してくれたりしないし、管理責任はすべて教員にある。しかし、一週間とか、5日とか出だせということはまずない。また、500人の教室をつくるときに、学内でかなり深刻な議論がなされた。大教室にも限度があるということである。教養部でウルトラマスプロをやっていた私からすると、マスプロ大量講義の過去を恥じるしかないようなことは多い。そして、今の大学は、こういう地味なことは、まったくアピールしない。
 また、外部評価などでもあまり評価の対象にならないのではないか。まったくどうにかしていると思うことは多い。目新しい工夫やキャッチコピーばかりが先行してよいものか。先日専門家の集まりで、大学院重点化の問題などが議論された。私の母校の大学院社会学研究科の定員は、私が入学したときの学部定員に迫ろうとしているらしい。そして定員を充足しないと、コラ!と怒られるらしい。絞り込んでとる見識はマイナス評価でしかないようなのだ。移行期とは言え、奨学金という名の借金、返還免除の制限、就職の困難。わけわかめな状況で、おいそれ入学はすすめられない。大学全体のスクラップアンドビルトでも狙っているのではないかという声もあった。実際できる人は、最近は直接海外の大学に留学させたりして、研究の後継者として育てるというような話も聞いた。となると、パーソンズ都留重人の出たアーマストカレッジみたいなのをめざすのもまた一興だとは思うんだけどね。
 ッテいう大学十年の計な話は大学行政にさほど関心がない私には似つかわしくないので、それの件はともかくとして、もっとすごい話も聞いた。DCとかPDとかの話も、誇張はあるだろうけど、すごいことになっているらしい。選ばれるとすごい研究資金とサラリーが確保される。なんかオレの給料よりいいんじゃないかっつーくらいのもの+科学研究費ってかんじらしい。で、選考だが、「クモの糸」だっつーの。エエエエと思ったら、たいした基準もねぇンじゃないかと思いたくなると言う。地味な基礎研究をしているとダメ。「地震」「津波」「リスク」とか、アップツーデートな言葉を入れると通ったりするのだという。たとえば私が出すなら、「地震とミルズ」とか出すと通っちゃったりするとかゆわれた。馬路かよとぶっ飛んだ。もちろん冗談だろうが、冗談になるくらいの根拠はあるようだ。津波学というコースをつくったら、留学生殺到とかいう悪い冗談を思いついたが不謹慎なので言うのはやめた。
 企業内教育をアウトソーシングするための大学をつくること。できるものとできないものの格差をつくること。などなどおぼろげに見えることは、いくつかあるけど、女子大の場合昔ながらの大学であり続けることができるきわめてバリアフルな根拠に充ち満ちている。答案採点の時間がたっぷりあることは、さして自慢にはならないのかもしれない。