『新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド』

 昨日買った本だけど、ペラペラめくっているうちに新旧2冊あらかた読んでしまった。もっとも読んだのはブックガイド編だけである。書き出し、キャラづくり、描写、シメのキメなどなどに分けて、小説の技巧をわかりやすく書いている。福田和也の点数つけた本と重複があるので、比較しながら読んだ。やっぱ、かなり好みの差があるということだけはたしかだろう。福田がボコボコに言った高橋源一郎のペンギン村とかをこの本はそんなにわるくゆってない。だけど福田が絶賛した石原慎太郎はこの本はボコボコに言っている。もっtも古井由吉とかになると、どっちも誉めまくりになっている。
 新版の方は、最新の作品が入っているから、まず最初に読んだのは、もちろん綿矢りさ金原ひとみだよ。とーぜんだろ。「金原のほうが萌えでしょ?」とか聞いたアホ学生がいたが、愚問だぜ。答えるまでもねぇだろ。顔も書いたものもね。両方とも渡辺直己氏の方が案内を書いているので、比較して読むには面白かった。綿矢のほうは、凡庸だ、このくらいで芥川賞なんて楽なもんだとか言いつつ、「狡猾な工夫」があるなんてことを言っている。金原のほうは、うそっ、まじで、ちょー、イタソー、てめー、あ、きゃーだとか、ドキュソなオノマトペや会話ばっかで、児戯にも劣る、ガキでも書ける、バカ蛇ね。みたいな悪し様な言いよう。著者たちがやっている小説教室でこんなアフォな作文やめない椰子がいたら、罰として音読させるらしい。幼いなりに工夫して書いた地の文と、アフォな会話やオノマトペーのギャップに気づき、「きゃー」とか呼んで、学生は赤面絶句し、悲鳴を上げると、怒り炸裂している。特定の椰子を思い浮かべながら、アドレナリン全開で書いているのがわかる。(・∀・)イイ!!。金原は平気で読むだろうけどね。ゆっておきますが、私はどっちかと言えば、金原>綿矢であって、絶対萌えではないのよ。

 ともあれ、そんなこともわからぬ未熟な書き手があっさり芥川賞をとり、その冒頭部に絶妙な「あ」を書きつけた『斜陽』の作家が、切望やむかたなき同賞をついに逸したという事実には、彼此あわせ見て、うたた深い感慨を禁じ得ぬのだった。

 柳美里石に泳ぐ魚』、深沢七郎『風流夢譚』だとか、激やばい作品がマンマで抜粋され、コメントがつけられているのはなかなかに面白い。特に後者は、大きな図書館だとか、大学図書館だとか、そこそこの図書館じゃないと読めないだろうから、抜粋といっても貴重だと思う。
 これを読んでいてちょっとだけ思ったのは、『反社会学』の著者に、『それでも社会学者になりたい人のためのブックガイド』を是非とも書いて欲しいということだ。権威者の顔色をうかがうことなく、ボコボコに言えるのは彼しかいない。まあしかし無理だろう。それだと、いくらなんでもマーケットが少ないわりに、カバーしなきゃいけない範囲が広すぎるからね。