三浦展『ファスト風土化する日本−−郊外化とその病理』をめぐって

 また泳ぎ、メシ喰って帰ってきました。帰ると三浦展ファスト風土化する日本』が届いていました。ソキウス野村一夫氏やtyadonさんとご一緒させていただいた子犬本@洋泉社の新書です。そーいや、今日行ったカメラ博物館の建物に宝島社があって、その近くに洋泉社がありました。ペラペラめくった程度ですが、三浦氏の鍵語とも言える「郊外化」を、地方都市に展開したもので、『大人のための東京散歩案内』と対になって、「ファスト風土化」して荒廃して行く日本について、批判的に分析するとともに、コミュニティデザイン、コミュニティマーケティグという観点から、具体的な提案をし、一つの貢献をしようとされています。郊外化の問題は、地方に展開されるとともに、情報化=地域情報化など、階級社会化=地域格差の増大といった問題と関連づけられます。『アクロス』時代は、感性集団たばねて、様々な試行をし、一つのコンテクストをつくられた三浦氏の著作活動は、作品性を結実し、さらにそれを発展させていこうとされているように思います。目次にそって概要をコメントすると次のようになります。

第一章 のどかな地方は幻想である
      →地域性の消滅とやばくなった地方
第二章 道路整備が犯罪を助長する
      →モータリゼーションと全国均一化する国道沿いの風景、そして犯罪の増大。
第三章 ジャスコ文明と流動化する地域社会
      →郊外自動車直づけブランドショップスタバシネコンゲーセン文化を分析
第四章 国を挙げてつくったエセ田園都市
      →列島改造と日本の「援助交際外交」
第五章 消費天国になった地方 
      →ありがとうジャスコ!地方のイカレタ消費社会化
第六章 階層化の波と地方の衰退
      →消費社会化、情報社会化、階級社会化のツケは全部地方に まるでごみため
第七章 社会をデザインする地域
      →スロー風土と社会をデザインする地域 希望のありか

 こんなカンジっす。随所に三浦氏らしい、ことばのセンス、データの読み方、洞察力、観察力などが生かされていて、しかも非常に読みやすい。随所にある写真がまた印象的です。三浦氏は、新潟の高田の出身であり、<地方>という問題については、非常にソウルフルなところがあると思うし、その再生といったことについて、各方面からの相談にのっていることもあり、切実な問題をシビアに見つめた上での具体的な提言は、文化の政治学的に言えば、それはそれで批判もあるのでしょうが、立教大学21世紀社会デザイン研究科で、同じ佐藤毅ゼミ出身の中村陽一氏などと交流を重ねながらこういう仕事をしたわけであり、いろいろな新しい可能性をさらに胚胎した作品に仕上がっていると思います。地域社会学などの見地からは、推論の飛躍や、データ考証の問題など指摘されると思いますが、それはそれで生産的な議論に発展するのではないでしょうか。
 私が大学五年生の時から、M1にかけて、三浦氏と毎週のようにしゃべる時間を持ちました。話したのは、とりとめもない雑談、文学談などでした。美学が非常にはっきりしている人であり、モノのとらえ方になんとも言えぬ艶があって、刺激的な言説を提示されていました。三浦氏も、中村氏も、博学で、情報も早く、私の読書量やセンスではまったく太刀打ちできる相手ではなく、私はもっぱらギャグとシモネタでおちゃらけてました。それでも、ああゆう時間が得られたことは、幸福なことでした。教室でも、研究室でも、同じように学生と話すのが、私なりの「教育」の骨子になっていると思います。
 追記:三浦氏からの私信より。「hatenaってのはたしかに社会学とか編集者とかが多いようですな。かまやつ女についても誰かが書いています。かまやつ女論は12月に出ます。予定では3月にも若者論と団塊世代論、5月には階層消費論を出す予定です」。かまやつ女論も出るようですね。今、カルチャースタディーズ研究所でやっていらっしゃる団塊世代論他も出るようです。はてな社会学関係は多いとは知っていましたが、編集者というのは初耳です。