ブラウニー

 いろんな理由があって、掲示板に書き散らしたものを整理しております。受講者への便宜もあり、必要な範囲でアップしてゆきたいと思っています。ブラウニーの音楽が、現象追随的なあてずっぽなものにすぎないのか、それとも多分に予言的なのかはわかりませんが、「かなりまずいPOP」という一句だけは、脳天に突き刺さるものがあり、こだわり続けているグループです。
 80年代に競争社会がセットされ、社会主義崩壊とグローバライゼーションで競争は激化した。学校も、地域も、家族も、なんかとげとげしく、荒んでいる。包絡できる価値や枠組みも希薄だ。「よかった時代」の枠組み(いわば「総動員の文化装置」)では、よーいドンで競争を始め、こぼれてもそれなりの充足はあった。今、その枠組みには経済的な根拠がなくなった。分け前は減り、競争は純化・激化する。勝ち組は少数精鋭化する。ここは、やり直しのできるチャンスの国ではない。こぼれちまったらおしまいSA。なのに昔の枠組みが引きずられていて、努力目標は画一的だ。うすうす感じているのに否定はされず、生殺しのように手応えのない古くさい励ましが続き、「世界に一つだけの花」(SMAP槇原敬之)は踏みにじられる。そんな時代に、ブラウニーのポップな渇望が炸裂した。

寝坊しちゃった まいっか 今日は一日仕事休んどこ
久々のいい天気だし なんて言ってたら夜になる
そのまま眠りこんで不思議な夢で目が覚める
ぷるぷるでぶつぶつした何かに僕は襲われる

それがPOP
かなりマズいPOP
終わらないPOP
気味の悪いPOP 聞こえてる

自由に生きることは難しくないけど楽しくもない
ウソの1つや2つついたくらいが人生オモシロイ
暗闇や見えないものや人の心に脅えたくない
本当のことワカラナイ でもたぶん気にすることもない

と思うPOP
かなりマズいPOP
終わらないPOP
趣味の悪いPOP
鳴りやまないPOP 聞こえてる

そう僕はね

サイレンの音聞きたくて街に炎を放つ子供みたいに
誰かに愛されたくてタマラナイ
(B for BROWNIE #1)

ミレニアムの年頭の頃だったかなー、原稿に終われ、現実逃避していたのですが、そうもいかず外へ出て、じゃ最近の流行ものの音楽でもつまみ食いしよっかなどと思って、近所の新星堂ユニクロの下)に逝きまして、ヒーリングやワールドミュージックを冷やかして、そのあとロックのところを見ていたら、クリームのベストに目が留まり久しぶりにジンジャー・ベイカーの太鼓でも聞いてみますかと、手にとり、それからモー娘のラブマシーンの声に惹かれて、J−Popへ足を運んだところ、ブラウニーのミニアルバムがディスプレーされていて、ツボなジャケットなので、即視聴ましたら、これが最初に東京少年を聴いた時と同じような、キャッチ感でございまして、即購入しますた。これが「勝手にシンドバッド」だったとすれば、「いとしのエリー」に当たるのが次のセカンドです。作意が勝ちすぎているのかもしれないし、売れなかったわけだけど、私には印象深いものがありました。

海へ向かう電車が好き 終電へ向かう旅が好き
空と海は嫌いだったけど 雨の日には好きになる
言葉は少し苦手 歌うことなら容易いのに
声にならない言葉 喉の奥に刺さったまま

犬も好き猫も好きだったけど 懐かれるのは好きじゃない
愛されないことには慣れるけど 愛せないことがツラい
世話もしたし可愛がったけど 愛さなかったら死んじゃった
嘘でもいいから言うべきなの でも言葉見つからない

触れるほどそばにいて 月よりも遠い人
人混みの中紛れ見失ってゆく
ビルの隙間に映る愛しいあなたの影
踏みつけても離れる 遠くなってゆく

ラッシュの電話 二人で乗って人に流されてゆく
宇宙人の映画観ていた日曜日の朝から
カメラを持って街に出たけど 写したのは雲ばかり
  海へ向かう電車が好き たぶん君のことも好き>
                    (B for BROWNIE #2)

 で、3年後の2003年4月、ファクトリーで見たDetroit7の新譜を探していて、Jインディーズひやかしていたら、な、なんとブラウニーがフルアルバム出していますたの。『I’m OK』。さっそくゲッツ!(当時流行っていましたねぇ)。でも、口上がめたくそ饒舌なのでちょっと悪寒な予感。

もうレディオヘッドは聴かなくてもいい。もう ビョークを待ち焦がれることは無い。もうBECKも心を動かさない。僕らには、ブラウニーがいるから。そう、J−POPで最もヤバいあの3人が帰ってき た。ブラウニー1stフルアルバム。2年をかけて、ここに完成

う〜ん2年もかけたのかと思いつつ、裏返すと、またもや

何がそんなに哀しいのか。何で そんなにイライラするのか。何が欲しくて、どこに行きたいのか?理由のなき陰鬱な世界を、泣きながら笑い飛ばすあの3人が帰ってきた!ますます美しく、ま すます壊れてゆくブラウニー、2年をかけて作り出した、イルで、チルでキルなポップアルバム。崩壊するリズムと炸裂するテルミンの中に、新しい子供たちの 唄が聞こえる

ですと。わお!ちょっと自己模倣っぽくはあるけど、シングル2枚だしたあとの2年かけたフルアルバムだから、イル&チル&キルなおこちゃま のポップを作品化したのは、当然かもしれませぬなぁと思いつつ、購入。評価はいろいろあるんだろうけど、アテクシ的には2年前のめっちゃ安普請ちっくな泡 沫感覚のポップ、ステップ、パンクがけっこういかったんですが、フルアルバムとなるとそうもいかんのでしょう。ジャケツはもろ寓話チック。

この世は色で 塗り固められているきっと下品の原因

と大きなロゴで書いてある。色を言葉に変えれば、もはや確信犯っすか?これって?「アイスピック」って曲の出だしな のね。確かに危ないよこの曲。超ネオ麦茶っす。テレビに出たら、問題になるっしょ。その前にも、リアリティが変容して、酒鬼薔薇な寓話が疾走する。

夜に なると現れてた戦士隊キャッツ/血生臭い野菜をちょうだいベジタリアン

なんて、モロそうでしょ。歌詞読むと、わりかし説明的でベチョッとフットワーク重い気もするけど、やばい世界がうねうねしている。シングルカットできるような曲はないと思うけど、練り上げただけのことはあるんだろうねぇ。2年前は確信 犯拙劣安普請撃ち込みであったわけで、今回はもしかすると確信犯饒舌メッセージ系なのかもしれませぬ。

クソまみれのラブソング歌う。どこかのポップなラブソング歌う。泣けのサビで殺人者になる。だからボクはラブソング歌う。

素面で踊りだす シーラカンス歌いだす。走り出したら止まらないの。っつーか 止まり方よく分からないの。真夜中に唄いだす マリもなのに羽化しだす・・・。

音はねぇ・・・間違いなく趣向はテルミンなわけだけど・・・。ポップな切実感は、哀愁を帯びるまでに説得的であり、わからんわけではないのではあるけれども、もうちょっと感覚的なほう がわかりよくないかぁ、ってカンジがしないこともない。アレゴリーっぽい歌詞は疾走しているし、リズム系も背筋の神経を敏感にさせるような気もする。ただ だけど、最初のシングル(ってったって、二枚しか出してないわけだけど)にあるもののほうが、なんか感覚的にイイカンジなのは否めないんだけど、それは私 の無知とチープ志向によるものなのかもしれない。ともかく、私は「かなりまずいPOP」とスッチャスッチャ♪歌われるのを聴いた時ぶっとんだのは忘れられません。