奥井智之『プライドの社会学』

 奥井智之先生からご高著を賜った。とりあえずのお礼状を書き、またぞろ馬場修一ゼミでの櫻井哲夫との論争などを思い出しつつ、報告された修士論文の概要が非常に論理的であることに触れさせていただいた。すると、この一種の「ミニマモラリア」をモチーフにしたような著作では、論理が尽くせないというご返信をいただいた。そうではないのだ。こういう作品を書いても、非常に論理的であるということが私の言わんとしたことである。目次を見ればわかるように、非常に端正な構成となっている。数は10に厳選されているが、配列は網羅的、論理的である。そして、この10の主題が6つの素材で構成されている。合計60個が端正に描出される。私は、『アジール』を思い出し、社会学社会学史のテキストを思い出し、入門的新書を思い出し、そして、偽学生として行ったゼミで、強い刺激を受けた修士論文の論理の組み上げ方を思い出した。最初は、山田盛太郎か!とツッコミたくなるような堅牢さであったが、社会史などの動向を摂取し、だんだんと柔らかみを増していったことを思い出す。

プライドの社会学: 自己をデザインする夢 (筑摩選書)

プライドの社会学: 自己をデザインする夢 (筑摩選書)

【イソノ家の謎】柄谷行人を解体する46【フライングゲット】
269 :考える名無しさん:2013/04/22(月) 00:21:08.42 0
プライドの社会学――自己をデザインする夢
奥井智之(1958-)著
筑摩選書 2013年4月 本体1,600円 四六判並製256頁 ISBN 978-4-480-01571-6


帯文より:希望は作り出せるか。自分で自分のキャリアはデザインできるか。自分に「誇り」をもつことは、
美徳か悪徳か。プライド――この厄介な生の原動力をめぐる社会学的分析。


カバーソデ紹介文より:一般に、心理学の研究対象となっている「プライド」。しかしそれに、
社会学的に接近することも可能ではないか。自分に「誇り」をもつことは、まさに自他=社会関係
のなかで生起する出来ごとであるから。プライドをもって生きることは、たえず「理想の自己」を
デザインすることに等しい。わたしたちにとってそれは、夢か、はたまた悪夢か。プライド――この
厄介な生の原動力に、10の主題を通してせまる社会学の冒険。


目次:
はじめに
第1章 自己――はじめに行動がある
第2章 家族――お前の母さんデベソ
第3章 地域――羊が人間を食い殺す
第4章 階級――どっちにしても負け
第5章 容姿――蓼食う虫も好き好き
第6章 学歴――エリートは周流する
第7章 教養――アクセスを遮断する
第8章 宗教――神のほかに神はなし
第9章 職業――初心を忘るべからず
第10章 国家――国の威光を観察する
おわりに
参考文献一覧
引用映画一覧
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/philo/1364381858/269

 と同時に、未だ苦闘を重ねているのだろうな、と思ったりもした。学術書を出し、新書を出し、バウマンや経済学の本を翻訳し、公的な試験の仕事をしたりしながら、テキストを二冊書いたり、とたくさんの仕事をされてきて、なおモヤモヤしているものを抱えているのではないか、と思うのである。とあるシンポジウムでごいっしょした時、ある先生が非常にオーソドックス、という形容をされていたのを思い出す。だからこそ、信頼されるテキスト、概説書の著者となったのは間違いないように思う。もちろん学術書も、私などが僭越にものをいうべきではない、高い水準のものばかりだ。しかし、それでもなお飽き足らない何かを抱えて、学術表現を生み出していることに表敬したいし、その一歩としての本書への反応に注目したいと思う。ありがとうございました。